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[今週の株式市場]日米株式市場の「気掛かりな」サイン~金融政策イベント後に上昇できるか?~

トウシル / 2024年12月16日 12時5分

[今週の株式市場]日米株式市場の「気掛かりな」サイン~金融政策イベント後に上昇できるか?~

[今週の株式市場]日米株式市場の「気掛かりな」サイン~金融政策イベント後に上昇できるか?~

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
【テクニカル分析】今週の株式市場 日米株式市場の「気になる」サイン ~金融政策イベント後に上昇できるか?~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>

 先週末12月13日(金)の日経平均株価は3万9,470円で取引を終えました。

 前週末終値(3万9,091円)からは379円高、週間ベースでも2週連続の上昇となったほか、12日(木)の取引時間中には、4万円台を回復する場面も見られ、株価の数字だけを追っていく限りでは、悪くない値動きだったと言えます。

 こうした値動きの背景には、米国で先週公表された経済指標(11月分の消費者物価指数)の結果を受けて、FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ実施が確実視されたことをはじめ、米ハイテク株への買いが続いていたこと、国内株市場でも、週末13日(金)に控えていたメジャーSQ(先物・オプション取引の清算日)に絡んだ思惑が働いていたこと、そして、中国株市場でも「中央経済工作会議」の開催で経済政策への期待感が高まっていたことなどが挙げられます。

 そんな中、今週はいよいよ、FOMCが17日(火)から18日(水)、日銀金融政策決定会合が18日(水)から19日(木)にかけて開催され、12月相場のヤマ場を迎えます。

「日米の金融政策イベントを通過し、株式市場がさらに上昇できるか?」が焦点になるわけですが、チャート上にはいくつかの「気掛かり」なサインも出現していますので、今回のレポートではその点について考えて行きたいと思います。

日経平均は「離れ小島」をどう見るかがカギ

 まずは、日経平均の値動きから確認します。

図1 日経平均(日足)の推移 その1(2024年12月13日時点)

日経平均(日足)の推移
出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

 冒頭でも述べたように、先週の日経平均は一時4万円台に乗せる場面があったほか、株価も3本の移動平均線(25日・75日・200日)よりも上の位置で推移しており、値動き自体は堅調だったことがうかがえます。

 ただし、上の図1でローソク足の並びを見ると、「ヒゲ」と呼ばれる上下に伸びた線で長いものが多くなっています。一般的に、ヒゲは「揺らいだ気持ち」を意味しますので、足元の相場は「迷いが生じている状況」と読み取ることができます。

 また、4万円台に乗せた12日(木)の前後のローソク足が、いわゆる「窓」を空ける格好となっていて、離れ小島のようにポツンと取り残されているようにも見えます。

 これは「アイランド・リバーサル」と呼ばれ、株価の高値圏や底値圏で出現すると、相場のトレンドが転換しやすいとされている形状です。実際に、上の図1でチャートを過去に遡ると、10月と7月にアイランド・リバーサルが出現し、その後の株価が下落していることが分かります。

 つまり、先週の日経平均の日足チャート上には、「迷い」と「天井」を示唆する兆候が出現したことになりますが、これが「気掛かりなサイン」のひとつです。

 ただし、後者のアイランド・リバーサルについては、天井サインとしては弱いと考えられます。その理由は、アイランド・リバーサルが出現した位置と、現在の相場状況です。

 図1で7月に出現したアイランド・リバーサルを見ると、日経平均が最高値を更新する中で出現しており、天井サインとしては強い意味を持ちましたが、先週出現したアイランド・リバーサルは、4万円台水準で出現したとはいえ、10月から2カ月以上続くレンジ相場の上限で出現しているため、このまま相場が下落トレンドに転じるというよりは、3本の移動平均線の下抜けや、レンジの下限である3万8,000円水準割れを確認しつつ、下落トレンド入りを確認して行くことになります。

 10月15日に出現したアイランド・リバーサルについても、株価が下落したものの、結局はレンジ相場が続いたため、テクニカル分析的にはあくまでも「レンジ相場の脱却」の方が、見極めるべき優先事項としては高いと思われます。

 したがって、日足チャートにおける日経平均の見通しは、先週とあまり変わっていません。

図2 日経平均(日足)の推移 その2(2024年12月13日時点)

日経平均(日足)の推移
出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

 上の図2は、前回のレポートでも紹介した日経平均のトレンド分析ですが、レンジ相場が続く中で、8月5日と10月15日の上昇を起点とする上向きのギャン・アングルの「2×1」ラインと、7月11日と10月15日の高値どうしを結んだ「上値ライン」を意識しながらの推移が続いています。

 今週も、日米の金融政策イベントを経て株価の上昇基調が続いた場合、この「2×1」ラインに沿う格好で上昇し、再度4万円をトライする展開が見込まれ、反対に下落する展開となった場合には、先ほども見てきたように、レンジ相場が続くのか、それとも脱却するのかが注目されることになりそうです。

米国株市場にも気掛かりな点

 続いて、米国株市場についても見て行きます。

 FOMCを見据えた米国株の状況やポイントなどについては、先週金曜日に掲載したこちらのレポートでも解説していますが、ここではチャートが示す状況やサインを中心に考えて行きます。

図3 米主要株価指数の比較(2023年末を100)(2024年12月13日時点)

米主要株価指数の比較
出所:MARKETSPEEDII・Bloombergデータを基に作成

 上の図3は、昨年末時点を100とした、米株価指数のパフォーマンスを比較したチャートです。

 ナスダック総合指数とS&P500の強さが続いていますが、足元では、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数が急上昇している一方で、NYダウと、中小型銘柄で構成されるラッセル2000が弱い動きとなっていることが分かります。

 とりわけ、NYダウについては、先週末の13日(金)時点で7日続落となったほか、ラッセル2000についても、11月下旬をピークに下落基調が続いています。

 11月からここ最近までのレポートでは、米国株の強さに言及することが多かったのですが、ふと気づいたら、何気に株価指数のパフォーマンスに差が生じていたわけです。これがふたつめの気掛かりな点になります。

 また、先週に強さを見せたSOX指数についても、その背景を確認しておく必要がありそうです。

米NYダウの弱さは金利と「あの銘柄」の影響?

 足元の、NYダウとラッセル2000のパフォーマンスが冴えない理由としては、米金利の上昇が挙げられます。

図4 米10年債利回り(日足)の推移(2024年12月13日時点)

米10年債利回り(日足)の推移
出所:楽天証券WEBサイト(REFINITIV)より筆者作成

 上の図4は米10年債利回りの日足チャートですが、先週あたりから低下傾向にあった利回りが上昇し、昨年10月と今年4月の上値を結んだ線も超えてきていることが分かります。

 製造業や銀行業といったバリュー銘柄が多いNYダウや、景気の影響を受けやすい中小企業で構成されるラッセル2000は、金利の動きに敏感に反応しやすく、株価の重石になったと考えられます。

 先週の米国では、11月分のCPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)といったインフレ関連の経済指標が公表されました。

 それぞれの結果は、今週のFOMCでの利下げ実施を後退させるほどではなかったものの、インフレ低下の速度が遅くなっていることを示すものだったため、「今後の米利下げペースは、市場が描いていた見通しよりも緩やかなピッチになるかも」という思惑を生んだことが金利上昇の理由として考えられます。

 したがって、今週のFOMCでは、ほぼ確実視されている利下げの実施よりも、今後の利下げペースについての、ヒントや言及が出てくるかが焦点となり、そして、その内容がハト派かタカ派かによって、株式市場の反応が上下に分かれることになりそうです。

 このほか、NYダウについては、ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)の株価下落も影響していると思われます。

図5 ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)日足の動き(2024年12月13日時点)

ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)日足の動き
出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

 上の図5を見ても分かるように、足元のユナイテッドヘルス株は急落しています。

 2週間前の12月4日(水)に、同社の幹部がNYで銃撃されて死亡するという事件が発生し、これをきっかけに、保険会社による治療の拒否や医療費の未払いなど、これまでに燻っていた健康保険業界に対する不満や批判が表面化したことが株価下落へとつながった格好です。

図6 米NYダウ構成銘柄のウエイト上位(2024年12月13日時点)

米NYダウ構成銘柄のウエイト上位
出所:Bloombergデータを基に作成

 また、ユナイテッドヘルス・グループは、NYダウを構成する銘柄の中でもウエイトが高くなっています。上の図6にもあるように、同社はゴールドマン・サックス・グループ(GS)に次いで、株価指数への寄与度が大きいことも、現在のNYダウのパフォーマンスに影響を与えていると思われます。

SOX指数の急上昇について

 続いて、先週に急上昇を見せたSOX指数についても見て行きますが、こちらも、先ほどのNYダウと同様に個別銘柄が指数を動かしています。

図7 米ブロードコム(AVGO)日足の動き(2024年12月13日時点)

米ブロードコム(AVGO)日足の動き
出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

 上の図7は米半導体メーカーのブロードコム(AVGO)の日足チャートです。決算と今後の強気な見通しを受けて、13日(金)に株価が急上昇しました。また、同社の時価総額も大きく、SOX指数に与える影響が大きい銘柄となっています(下の図8)。

図8 SOX指数構成銘柄の時価総額上位(2024年12月13日時点)

SOX指数構成銘柄の時価総額上位
出所:Bloombergデータを基に作成

 では、このままSOX指数が上昇傾向を辿れるかというと、現時点では不透明です。

図9 米SOX指数(日足)の動き(2024年12月13日時点)

米SOX指数(日足)の動き
出所:MARKETSPEEDIIより筆者作成

 上の図9は米SOX指数の日足チャートです。

 先週末13日(金)の株価は、7月と10月の高値を結んだ上値ラインと、8月と9月の安値を結んだ下値ラインが交差しているところに位置しており、上方向と下方向のどちらにも動ける絶妙なポジションにあります。

 仮に、このまま株価が上昇し、本格的な上昇トレンド入りするには、6月と7月の高値をダブル・トップと見做した際の「ネックライン」を超えて行く必要があります。10月に高値をつけに行った際には、このネックラインを上抜けしきれずに下落に転じてしまった経緯があるだけに、このネックラインは上値の目安として強く意識されそうです。

 また、足元で株価が軟調気味に推移しているエヌビディア株が復調できるかもSOX指数の上昇のカギとなりそうです。

 このように、テクニカル分析的に気になる日米のサインについて見てきましたが、現時点で過度に警戒する必要はなさそうなものの、まずは、今週の金融政策イベントを経て、米金利が低下できるかどうかが相場の行方を左右することになりそうです。

(土信田 雅之)

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