高配当株ランキング~2025年相場での活躍期待が高い高配当利回り銘柄
トウシル / 2024年12月18日 16時0分
高配当株ランキング~2025年相場での活躍期待が高い高配当利回り銘柄
日経平均は一時4万円台回復も、ボックスレンジの動きを継続
直近1カ月(11月15日~12月13日)の日経平均株価(225種)は終値ベースで2.1%の上昇となりました。この期間も、3万8,000~4万円レンジ内での推移が続く格好となり、方向感は定まらない展開となりました。
11月後半の調整場面では3万8,000円割れ水準で押し目買いに下げ渋り、一方、12月12日には一時、10月15日以来の4万円台回復場面がみられましたが、その後は達成感も優勢となっています。なお、この期間(11月15日~12月13日)のダウ工業株30種平均は0.9%の上昇となっています。
11月の中旬から下旬にかけて、日経平均は上値の重い動きが続きました。FRB(米連邦準備制度理事会)高官のタカ派的な発言が目立ち、12月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ見送り観測が強まったほか、トランプ次期大統領による関税政策などへの懸念も優勢になったようです。
さらに、注目されたエヌビディア(NVDA)の決算は期待通りの好内容でしたが、株価には出尽くし感が先行する形となり、半導体関連株の重しとなりました。ただ、12月に入ると相場は反転しました。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が実質運用利回り目標を引き上げる方針と伝わったことで、国内株式ウエート比率が引き上げられるとの思惑につながったようです。
また、雇用統計やCPI(消費者物価指数)の発表を通して、米国の12月利下げ期待が再燃する形となりました。一方で、日本銀行は12月の利上げを先送りするとの見方が強まったため、為替相場でドル高・円安が進行し株式市場にとってフォローとなりました。さらに、中国の景気刺激策が強化されるとの期待も一時高まりました。
この期間、時価総額1,000億円以上の企業における上昇率上位6銘柄のうち5銘柄は、買収プレミアムへの期待で買われています。トプコン(7732)は非公開化に向けて入札プロセスに入ったと伝わりました。
ウェルスナビ(7342)は三菱UFJフィナンシャル・グループが完全子会社化を目指してTOBを実施すると発表しました。三菱ロジスネクスト(7105)も三菱重工業が保有株売却に向けた手続きを進めていると伝わりました。
さらに、KADOKAWA(9468)はソニーグループが買収に向けて協議と報じられ、住信SBIネット銀行(7163)はNTTドコモによる買収観測が高まりました。そのほか、SOMPO(8630)は大規模な自社株買い発表が、東京ガス(9531)はアクティビスト・ファンドの大量保有が買い材料視されました。
半面、ローツェ(6323)、レーザーテック(6920)、KOKUSAI ELECTRIC(6525)、TOWA(6315)などの半導体関連株が10%以上の下落と、引き続き対中半導体規制の影響が警戒される状況となっています。ほかにも、くら寿司(2695)は株主優待制度の廃止発表が嫌気材料とされ、日産自動車(7201)は米国での減産長期化報道がマイナス視されたようです。
2025年は外部環境厳しいもののM&A活発化の可能性などが下支えに
年末にかけての焦点は、12月17~18日に開催されるFOMC、18~19日に行われる日銀金融政策決定会合となります。FOMCでは0.25%の利下げ実施、日銀では利上げ見送りがコンセンサスとみられ、それ自体にサプライズはないでしょう。
日米株式市場にとってポジティブではありますが、株価反応という面では、それぞれの今後の方向性が注目されることになります。足元では、米国は2025年の利下げペース鈍化が意識されてきており、日本では1月の利上げが確実視されつつあります。
そのため、米国では追加利下げに前向きな発言が、日本では利上げに慎重なスタンスが示されない限り、株価はややネガティブな反応を示す可能性があります。為替市場でも、こうした日米の金融政策の変化を織り込んで、ドル安・円高の流れにつながっていくものと考えられます。
2025年の株式市場を見据えると、株式市場の外部環境は比較的厳しくなるものと考えられます。まずはトランプ新政権による関税政策の影響が懸念されます。米国への対抗措置が各国で広がることも想定すると、世界経済にとって明らかにマイナスの影響が強まるでしょう。
関税政策に伴って米国では再度インフレ進行が懸念され、利下げペースは一段と鈍化方向に向かう可能性もあります。関税政策とは別に対中半導体規制が、政権移行に伴ってどう変化していくのかも注視すべきでしょう。これを見極めない限りは、半導体関連株の反発も難しいと考えられます。
ちなみに、関税政策や半導体規制の影響による中国の景気先行き懸念は欧州の景況感にも影響を与えます。トランプ政権の「米国第一主義政策」は、台湾有事も含め地政学リスクの高まりにもつながってきそうです。国内要因を見ても、日銀では年内2回ほどの利上げを行うとみられており、それに伴うドル高・円安の反転は織り込む必要があります。
また、7月には参議院選挙が行われるため、国内政局に対する不透明感が強まる局面も想定されます。
こうした中、株式市場の下支えになるのがM&A(企業の合併・買収)の活発化であると考えます。とりわけ米国では、バイデン政権下で抑制されてきたM&Aの動きが、トランプ政権による規制緩和の推進で一気に活況に転じる可能性が高いでしょう。
こうした流れは日本にも大いに波及する余地があります。仮に、カナダのクシュタールによるセブン&アイ・ホールディングス買収などが成功すれば、日本企業の意識の変化として、海外企業による国内大企業のM&Aが大いに盛り上がる余地が広がりそうです。
これは国内企業同士の大型再編に通じるものでもあるでしょう。東京証券取引所の改革、親子上場解消の動きはアクティビスト・ファンドに対する追い風にもなります。もともと、日本は株主提案を実施する基準が緩く、こうしたファンドの活躍余地は広がりやすい土台にあります。
外圧による株主還元拡充の動き、MBO(経営陣による買収)はもう一段拡大していくものとみられます。
2025年に活躍が期待できそうな高配当利回り銘柄
2024年も残りわずかとなり、今回は2025年の株式市場で期待できそうな高配当利回り銘柄を選定しています。業種別でみると、2024年度の減益見通しから2025年度に増益に転じるとみられるセクターは自動車や鉄鋼などが挙げられており、業績モメンタムの好転という意味で注目できそうです。
そのほか、2025年の事業環境の変化、M&A・アクティビスト関連などを考慮して選定しています。
通常、3月の配当権利取りに向けて、年前半は高配当利回り銘柄が人気化しやすいですが、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)投資枠の拡充もあって、今後もこの傾向は継続していくものと考えられます。現在は総じて、高配当利回り銘柄の投資タイミングと言えるでしょう。
(表)2025年に期待の高配当利回り銘柄
コード | 銘柄名 | 配当 利回り (%) |
12月13日 終値 (円) |
時価総額 (億円) |
今期 営業 増益率 (%) |
騰落率 (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
7296 | エフ・シー・シー | 6.47 | 3,120.0 | 1,624 | 5.9 | 79.31 |
5444 | 大和工業 | 5.33 | 7,500.0 | 4,875 | -36.4 | 0.79 |
4042 | 東ソー | 4.78 | 2,091.0 | 6,797 | 17.7 | 16.10 |
5201 | AGC | 4.48 | 4,683.0 | 10,182 | 0.9 | -10.56 |
1820 | 西松建設 | 4.22 | 5,208.0 | 2,176 | -4.4 | 32.65 |
注:今期営業増益率は会社計画 注:騰落率は2023年12月29日終値比 注:AGCは12月決算、その他は3月決算 |
銘柄選定の要件
- 配当利回りが4.2%以上(12月13日現在)
- 時価総額が1,500億円以上
- 来年度にかけ業績拡大ポテンシャルや期待テーマのある銘柄
厳選・高配当銘柄(5銘柄)
1 エフ・シー・シー(7296・東証プライム)
クラッチ専業の自動車部品メーカーです。二輪向けが47%、四輪向けが53%(2025年3月期見込み、以下同)を占めており、利益構成比は二輪向けが高くなっています。主要顧客別では、筆頭株主となっているホンダグループ向けが37%を占めますが、四輪事業においてはフォード向けが最も高い構成比となっています。
また、海外売上比率は米国やアジアを中心に93%の水準となっています。非モビリティ事業では、セラミックセッターやリチウムイオン電池用導電助剤の量産化などを進めています。
2025年3月期上半期(4-9月期)の営業利益は100億円で前年同期比55.3%増となっています。従来計画であった78億円を大きく上振れました。インドやインドネシアにおける増収効果に加えて、為替の円安効果も収益の押し上げ要因となりました。2025年3月期通期予想は160億円、前期比5.9%増を据え置いています。
二輪事業を上方修正した一方、四輪事業は下方修正しています。中国の下振れリスクや為替の影響を考慮して、上半期と比較して利益水準の低下を見込んでいますが、下期の為替レートは140円を前提としており、上振れの余地は大きいとみられます。
上半期の決算発表時に、年間配当金計画を大幅に上方修正しています。旧東証第一部上場20周年を記念した記念配当金126円を実施することで、年間配当金は従来計画の76円から202円、前期比128円増に引き上げています。
また、発行済み株式数の2.5%に当たる125万株、25億円を上限とする自社株買いの実施も発表しました。会社側では、2026年3月期も還元性向40%を視野に入れているもようであり、年間配当金も130円程度の水準は期待できるとみられます。記念配当金剥落による配当利回りの低下を過度に警戒する必要は乏しいと判断します。
なお、米トランプ氏の大統領就任を受けて、目先はエンジン車の復調が見込まれる点などは、同社にとってフォローとなる可能性もあるでしょう。
2 大和工業(5444・東証プライム)
電炉メーカーの大手で、ビルや工場の建設に用いられるH形鋼が7割近くを占める主力製品です。電炉メーカーの中でもいち早く海外に進出しており、現在では、米国、ASEAN(タイ、ベトナム、インドネシア)、中東(バーレーン、サウジアラビア)、韓国に拠点を持っています。
経常利益の75%が海外で占められており、とりわけ、米ニューコアとの合弁会社ニューコアヤマトスチールの持分法利益が高水準となっています。自己資本比率は84%(2024年9月末)で無借金経営、財務安定性は高い状況です。2024年5月には、インドネシア鉄鋼メーカーの形鋼事業を新規に買収しました。
2025年3月期上半期(4-9月期)経常利益は418億円で前年同期比17.3%減となっています。世界的な鋼材需要や市況の軟化傾向を映して売上高が減少し、安価な中国材との競争激化もコストアップ要因につながりました。一方、持分法投資利益は柱の米国事業が安定した高収益を確保する形になっています。
2025年3月期通期では750億円で前期比24.4%減の見通しです。従来計画の810億円からは下方修正の形となっています。想定為替レートを円高に見直したほか、持分法投資損益も幾分下振れするもようです。なお、年間配当金は前期比横ばいの400円を計画しています。
株主還元方針としては、配当性向40%をメドとし、当面は最低配当金300円としています。また、上半期決算発表時には、発行済み株式数の4.64%に当たる300万株、255億円を上限とする自社株買いの実施も発表しました。当面は需給面での下支えにつながるとみられるほか、豊富なキャッシュ水準からは今後も継続的な自社株買い実施が想定されるでしょう。
また、同社に関しては、米大統領選でトランプ氏が勝利したことで、保護主義政策の強まりがプラスに影響する銘柄として注目することができます。最大の収益源は米国の合弁会社であり、米インフラ投資の拡大による恩恵享受が期待されるほか、米国企業第一主義政策も対中圧力という面も含めてストレートに享受しやすいと考えられます。
3 東ソー(4042・東証プライム)
塩ビ・苛性ソーダなどで国内トップシェアを誇ります。ポリエチレンやCRゴムなどといった石油化学事業も展開しています。さらに、免疫診断装置や試薬、ハイシリカゼオライト、歯科材料などの機能製品を強化しています。
世界19カ国、約50拠点で展開(2024年3月末)し、海外売上が約過半数を占めています。ファインセラミックス用ジルコニア粉末、合成ゴムのCSMなどは世界でトップシェア、電解二酸化マンガンなどは国内唯一の生産者となっています。発行済み株式数の43.9%を保有するオルガノ(6368)は上場子会社になります。
2025年3月期上半期(4-9月期)営業利益は473億円で前年同期比47.6%増となっています。クロロプレンゴムの販売数量増加で石油化学事業が増益となったほか、苛性ソーダなどの販売数量増加で、クロル・アルカリ事業の収益が大きく改善しています。
2025年3月期通期予想は従来の1,000億円から940億円、前期比17.7%に下方修正していますが、年間配当金は従来計画の85円から100円、前期比15円増に引き上げています。なお、中国経済の停滞や半導体関連需要の回復遅れが業績下方修正の要因となっています。
6月5日に英投資ファンドであるシルチェスターが5.06%の大株主になったことが明らかになりましたが、その後も買い増しを続け、10月31日には7.27%まで保有比率が上昇しています。今回下方修正ながら増配に踏み切った一因になったとみられるほか、今後は、シナジー効果が薄いとされるオルガノとの資本関係見直しに対するプレッシャーとなってきそうです。
オルガノ株式売却に伴う資本効率の向上、株主還元拡充期待が2025年には高まる見通しです。また、金利低下によって米国住宅需要の回復が鮮明化してくれば、住宅向け塩ビの需要回復、それに伴う同分野での採算改善が想定されることになります。
4 AGC(5201・東証プライム)
建築用ガラスや自動車用ガラスで世界トップシェア、液晶用ガラスでも世界2位のシェアを誇ります。ガラスと同様に世界トップ級の実績を持つ塩ビやフッ素樹脂などの化学品、石英素材などの電子部材事業も手掛けています。
EUV露光用フォトマスクブランクスでも世界第2位の位置づけとなっています。海外は欧州向けが主力となっています。ディスプレイ事業、バイオ医薬品CDMO事業など課題事業の収益改善に注力中です。一方、次世代半導体パッケージ向けガラスコア基板の開発を本格化させています。
2024年12月期第3四半期(1-9月期)の営業利益は940億円で前年同期比1.6%減となっています。建築ガラスの販売価格下落、ロシア事業譲渡に伴う減収、自動車用ガラスの出荷減少、苛性ソーダ・塩化ビニル樹脂の販売価格の下落などが影響したようです。
2024年12月期通期では1,300億円で前期比0.9%増の見通しとなっています。建築ガラスやライフサイエンスの悪化を、EUV露光用フォトマスクブランクスなど半導体関連製品の出荷増でカバーするようです。なお、ライフサイエンスに係る減損損失やロシア事業の譲渡に伴う株式売却損で純損益は大幅赤字見通しですが、年間配当金は前期比横ばいの210円計画です。
業績の悪化に伴って、2024年の株価はマイナスパフォーマンスとなっていますが、2025年12月期は業績の底打ち反転が見込め、株価にも見直しの動きが強まる余地は大きいと予想されます。EUV マスクブランクスの好調が続くとみられるほか、自動車生産の回復につれて自動車用ガラスの反転が期待されます。
さらに、ディスプレイ用ガラスの値上げ効果、ライフサイエンス分野の構造改革効果なども寄与が想定されます。戦略投資枠の見直しに伴う株主還元の強化などにも期待が高まっているようです。
5 西松建設(1820・東証プライム)
準大手ゼネコンの一角で、ダムやトンネルなどの土木工事に強みがあります。施工ダム数は2020年3月現在で193カ所となるようです。アセットバリューアッド事業(旧:開発不動産事業)、まちづくり事業を足掛かりとした地域環境ソリューション事業なども展開しています。
海外はタイ、ラオス、ベトナムなどに進出しています。伊藤忠商事(8001)と資本業務提携関係にあります。株主還元方針としては、DOE(自己資本配当率)5%程度の安定配当性向を目指すとしています。
2025年3月期上半期(4-9月期)営業利益は91億円で前年同期比7.8%減となっています。これには、前年同期に発生した不動産売却一巡などが影響しました。一方、受注高は2,193億円で前年同期比85.7%増と大幅に拡大していて、国内官公庁向け土木工事、国内民間向け建築工事などが大きく増加しています。
2025年3月期通期では180億円、前期比4.4%減を見込んでおり、主に不動産事業等売上高の減少を見込んでいます。ただ、来年度以降の業績に関わる受注高は、4,550億円で同26.3%増と拡大の見通しです。なお、年間配当金は前期比横ばいの220円を見込んでいます。
建設業界は全般的に、足元で粗利益率の向上が目立ち始めています。同社に関しても低採算工事の売上構成比が2026年3月期にかけて大きく低下していく公算です。2025年3月期の受注拡大など受注残が豊富な中、利益率上昇を伴って営業利益の増益率は目先高まっていく可能性が高いと考えられます。
DOEを配当政策の基準としていることから、今後も減配に転じる可能性は乏しく、長期保有が可能な高配当利回り銘柄と位置付けられるでしょう。なお、外部環境の影響を受けにくい内需株である点も、買い安心感につながります。
(佐藤 勝己)
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