2025年の金(ゴールド)相場は上昇見通し
トウシル / 2024年12月24日 7時30分
2025年の金(ゴールド)相場は上昇見通し
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「2025年の金(ゴールド)相場は上昇見通し」
記録的な「大幅上昇」を演じた2024年
2024年の金(ゴールド)相場は、以下の図のとおり、歴史的高値に達する急騰劇を演じました。海外の金(ゴールド)相場は昨年(2023年)末比で最大およそ35%、国内は44%、上昇しました。
図:海外金(ゴールド)現物価格と国内地金大手小売価格の推移(1974年~)
2024年は、国内外の主要な株価指数が歴史的高値を更新した年でもありました。歴史的な価格水準で「株高・金(ゴールド)高」が実現したのは、以下のとおり、株高の局面でも金(ゴールド)相場を上昇させる圧力が存在したためです。
図:金(ゴールド)市場を取り巻く環境(2024年)
株高が目立って「代替資産(株の代わり)」起因の下落圧力が強まる局面でも、ウクライナ・中東情勢の悪化がきっかけで「有事ムード(資金の逃避先需要)」が強まったり、米国の利下げ観測によってドル安観測が浮上して「代替通貨(ドルの代わり)」起因の上昇圧力が強まったりして、金(ゴールド)相場は上昇しました。
こうした短中期視点の材料がもたらす上下の圧力だけでなく、中長期視点の材料である、金(ゴールド)の全需要のおよそ20%を超える需要(2023年)を担う中央銀行の買いが続いたこと、超長期視点の材料である、世界分裂やSNS・ESGをきっかけとした混乱を言い換えた「見えないジレンマ」が底流したことも、上昇圧力をもたらしました。
2024年の金(ゴールド)相場は、過去の常識(株と金(ゴールド)は逆相関)をものともせず、力強い上昇を演じました。果たして2025年は、どのような値動きになるのでしょうか。
複数のテーマが同時進行していること、価格はそれらがもたらす圧力が相殺されて形成されていること、同じテーマでもそこから発生する圧力の方向性が変化し得ること、などに留意の上、考えていきます。
米国金融政策:「利下げ方針堅持」で十分
米国の中央銀行にあたる「FRB(米連邦準備制度理事会)」は、2023年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げから利下げにかじを切りました。それ以降、足元も含め、時期や下げ幅など「程度」の議論はあれども、「利下げ」の方向でおおむね一致しています。
図:FFレートと海外金(ゴールド)現物価格の推移
上のグラフのとおり、2019年半ばから2020年5月まで行われた利下げ局面で、ドル建て金(ゴールド)価格は上昇しました。米国の利下げが、ドルを保有するメリットが薄まる→金利が付かない金(ゴールド)のデメリットが薄まる、という連想を生んだことが主な要因です。
米国の利下げは、ドル建て金(ゴールド)相場に「代替通貨(ドルの代わり)」起因の圧力をもたらします。
その後、2022年・2023年は、記録的な利上げによって生じたドル高が、ドル建て金(ゴールド)相場に「代替通貨」起因の強い下落圧力をもたらしました(下図右側参照)。
この間、ウクライナ戦争などの有事が発生したり、それによって株価が下落したりして複数の経路で上昇圧力が生じたものの、利上げによってもたらされた下落圧力に相殺されました。(ドル高の反対側の円安により、円建て金(ゴールド)は上昇)
図:FRBの利上げ・利下げが及ぼす金(ゴールド)相場への影響
2024年は、図の右側のとおり、米国は利下げの方向でおおむね一致しているため(程度の議論はある)、将来的なドル安への思惑から、徐々に金(ゴールド)相場には上昇圧力がかかりやすくなっていると言えます。(米国の利下げ回数が多ければ多いほど、利下げ幅が大きければ大きいほど、金(ゴールド)相場への「代替通貨」起因の上昇圧力は大きくなり得る)
程度の議論がなされる中で、いかに利下げ回数の予想が減少したとしても、いかに利下げ幅の予想が小さくなったとしても、「利下げ方針」が保持されていれば、金(ゴールド)相場には上昇圧力がかかり続ける可能性があります。2025年も、米国の金融政策をきっかけとした「代替通貨」起因の上昇圧力が続くと筆者は考えています。
中央銀行:新興国中心の買いは続くだろう
ここまでは金(ゴールド)市場を取り巻くテーマのうち、短中期の時間軸に該当する「有事ムード」「代替資産(株の代わり)」「代替通貨(ドルの代わり)」について述べました。ここからは、中長期に該当するテーマの一つ「中央銀行」、超長期に該当する「見えないジレンマ」について、述べます。
以下の図は、中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移です。各国の中央銀行は、対外的に何かあった時のために備えている資金である「外貨準備高」の一部を、金(ゴールド)で保有しています。2010年以降、中央銀行は全体として、金(ゴールド)の保有高を積み上げ続けています。
ウクライナ戦争が勃発したり、世界的にインフレが進んだりした2022年の買い越し(購入-売却)量は、年単位として過去最高になりました。翌2023年は過去2番目、2024年はそれに次ぐ規模になりそうです。2024年の上半期は、上半期として過去最高でした。
図:中央銀行による金(ゴールド)買い越し量の推移(2010年~) 単位:トン
WGC(ワールド・ゴールド・カウンシル)が毎年行っている、中央銀行へのアンケート調査によれば、中央銀行が金(ゴールド)を保有する際の意識決定の主なトピックは、長期的な価値保全/インフレヘッジ」「危機時のパフォーマンス」「効果的なポートフォリオの分散化」「歴史的地位」などでした(2024年調査)。
また、いくつかの新興国の中央銀行は「制裁への懸念」「政策ツール」「国際通貨システムの変化の予期」などといった、先進国の中央銀行が選ばなかった選択肢を選択しました。
全体的に、中央銀行は金(ゴールド)を、長期視点の時流において大きなマイナスの事象が起きた時に影響を軽減してくれる資産、と認識している節があります。
同アンケートでは、5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率はどうなると思いますか?という質問もなされました。回答結果は以下のとおり、全体の69%が金(ゴールド)の保有比率は上昇すると思っている、というものでした。
図:5年後、中央銀行の金(ゴールド)の保有比率はどうなると思いますか?(2024年)
新興国の中央銀行の75%だけでなく、先進国の中央銀行の57%が5年後の中央銀行の金(ゴールド)の保有比率が上昇すると思っているという回答結果は、世界全体に、長期視点の漠然とした不安がまん延していることを示唆しています。2025年も引き続き、中央銀行全体の買い越しは、続く可能性があります。
世界分裂:超長期視点で継続見通し
中央銀行の年間ベースの買い越しが連続し始めたのは2010年でした。ウクライナ戦争が勃発する10年以上前から、中央銀行たちの買いが目立ち始めていたのです。
中央銀行たちはなぜ、超長期にわたって買い続けているのか、その根本原因は何なのか、その根本原因が別の経路で金(ゴールド)相場を押し上げていないか、などについて確認するためには、視点を超長期に移し、同時に世界を俯瞰(ふかん:鳥のように空から広い範囲を一望する)する必要があります。
V-Dem研究所(スウェーデン)が公表している、世界各国の民主主義に関わる情報を数値化した自由民主主義指数に注目します。
民主主義の根幹に関わる公正な選挙、表現の自由、法の支配が守られているかなどを数値化したこの指数は、0と1の間で決定し、0に接近すればするほど自由で民主的な度合いが低いことを、1に接近すればするほど自由で民主的な度合いが高いことを意味します。
以下の図のとおり、第2次世界大戦終結後、0.6以上の比較的高い値の国の数の増加と、0.4以下の比較的低い値の国の数の減少が目立ち始めました。冷戦終結後、この傾向はさらに強まりました。民主主義を掲げ、建設的な話し合いを経て世界が平和に向かう機運が高まった時代です。
図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945~2023年)
こうした動きより、同指数はおおむね世界全体の民主主義の動向を反映していると言えます。
2010年以降の動きは、世界の民主主義の行き詰まりや、民主主義を良いと考える西側諸国の影響力の低下、非西側諸国の相対的な影響力上昇、ひいては世界分断・分裂の深化が進行してきたことを示唆していると言えます。
世界分裂は、戦争や資源国の出し渋りの直接的なきっかけになり得ます。また、世界分裂が目立つことで、自国第一主義が目立ちやすくなります。その結果、資源を武器として利用する国が増えやすくなります。
実際に今まさに、人為的な「減産」は原油で、政治的意図を持った「輸出制限」は小麦などの農産物で断続的に行われています。こうした主要な生産国による「資源の武器利用」は、コモディティ(国際商品)の需給を引き締める主な要因になっています。それが一因で、世界規模のインフレが継続しています。
図:2010年ごろ以降の世界分裂発生と金(ゴールド)価格上昇の背景
民主主義行き詰まり、戦争勃発、資源出し渋り、高インフレなどの長期視点の事象は、世界分裂がもたらしていると言えます。そしてその世界分裂の一因に、「感情優先、建設的な議論なし」が許され、民意が濁流と化す場になり得るSNSの負の側面、行き過ぎた環境配慮と人権配慮で非西側諸国を追い込んだESGの負の側面が挙げられます。
SNSとESGという、人類が良かれと思って生み出した技術や考え方がかえってあだになる、「見えないジレンマ」が生じている最中は、金(ゴールド)相場に複数の側面から上昇圧力がかかり続ける可能性があります。
未踏の値、3,000ドル、1万6,000円に到達か
ここまで述べてきたとおり2025年は、米国の利下げ方針堅持、新興国を中心とした中央銀行の買い継続、世界分裂の超長期視点での継続見通しによって、金(ゴールド)相場に上昇圧力がかかりやすい環境となる可能性があります。
しばしば発生が予想される、株高をきっかけとした「代替資産」関連の下落圧力と、ドル高をきっかけとした「代替通貨」関連の下落圧力を受け、短期的に上下する場面はありながらも、全体的には上値を切り上げると、筆者はみています。
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2025年の見通し)
2025年年末時点で、海外金(ゴールド)現物価格は1トロイオンス当たり3,000ドルに、国内地金大手小売価格は1グラム当たり1万6,000円(大阪の先物価格は1万4,500円)に到達していると考えています。
図:海外金(ゴールド)現物価格と国内地金大手小売価格の推移(1975年~)
[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例
長期:
純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)
投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA成長投資枠対応)
三菱UFJ 純金ファンド
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ゴールド・ファンド(為替ヘッジあり)
中期:
関連ETF(NISA対応)
SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
NN金先物ベアETN(2037)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)
短期:
商品先物
CFD
(吉田 哲)
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