1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

利回り3.8~5.2%!エネルギー安全保障に貢献する高配当利回り株4選(窪田真之)

トウシル / 2024年12月24日 8時0分

利回り3.8~5.2%!エネルギー安全保障に貢献する高配当利回り株4選(窪田真之)

利回り3.8~5.2%!エネルギー安全保障に貢献する高配当利回り株4選(窪田真之)

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
利回り3.8~5.2%、エネルギー安全保障に貢献する高配当利回り株4選

 今日は、エネルギー安全保障に貢献が大きいと私が考える高配当利回り株についてレポートします。

なぜ今、エネルギー関連株?

 なぜ今、エネルギー関連株に注目するか、まず説明します。原油先物はウクライナ危機後の高値からすでに大きく下落しています。日本企業のエネルギー事業の利益はあまり良くありません。株価もさえないものが多くなっています。

WTI原油先物(期近)の動き:2022年1月3日~2024年12月20日

WTI原油先物(期近)の動き:2022年1月3日~2024年12月20日
出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 ただし、人類のエネルギー依存は今後、どんどん高くなると思います。特に、今年は、生成AI(人工知能)の利用が世界中で急拡大することによって、電力需要が拡大するとみています。電力を大量に消費するAIデータセンターの増加によって、電力不足が話題になると予想しています。

 再生可能エネルギーの利用がどんどん増えていますが、今年は増加する電力需要を賄いきれず、ガス火力発電や原子力発電を増やす必要が生じると思います。それが、エネルギー価格全般の上昇につながると予想しています。そういう理由から、今はエネルギー関連株を、割安に買う好機と考えています。

エネルギー関連、買い推奨4銘柄

 日本のエネルギー安全保障への貢献が大きいと考える4社で、株価が現在、割安と判断できる銘柄を選別しました。

 日本は、資源を輸入に頼る国で、世界に広がる資源ナショナリズムでたびたび痛い目を見てきました。その経験から、日本企業は、海外で資源開発を幅広く手掛け、資源権益を拡大してきました。日本のエネルギー安全保障を守るのに寄与する資源・海運・電力企業を選別しました。
以下の4銘柄です。

エネルギー安全保障に貢献すると考える、高配当利回り株5選:2024年12月23日時点

コード 銘柄名 株価:円 配当
利回り
PER
:倍
PBR
:倍
1605 INPEX 1,960.5 4.4% 6.4 0.55
8058 三菱商事 2,512.0 4.0% 10.6 1.07
9101 日本郵船 4,997.0 5.2% 5.8 0.79
9502 中部電力 1,582.5 3.8% 5.7 0.43
出所:各社決算資料・QUICKより楽天証券経済研究所作成。配当利回りは1株当たり年間配当金(今期会社予想)を12月23日株価で割って算出。1株配当金は、INPEX86円、三菱商事100円、日本郵船260円、中部電力60円。PERは、株価を1株当たり利益(今期会社予想)で割って算出。今期とは、INPEXは2024年12月期、他は2025年3月期

 上記4社の株価指標をご覧ください。予想配当利回り3.8~5.2%と、魅力的な水準です。PER(株価収益率)は5.7~10.6倍と低く、PBR(株価純資産倍率)は0.43~1.07倍と低く、株価は割安と判断できます。

 利益も配当もしっかり出していて、エネルギー安全保障にとって重要な企業であるにもかかわらず、株価は低い評価となっています。4社とも、中長期で価値が見直されると判断しており、「買い」と判断しています。中でも、INPEXが、現時点では一番、割安で投資価値が高いと考えています。

 それでは以下、4社を買いと判断する理由についてコメントします。INPEXについて特に詳しく解説します。

INPEXを買いと判断する理由

 INPEXは、日本最大の原油・天然ガス開発・生産企業です。日本のエネルギー安全保障にとって、もっとも重要な会社と考えられます。敵対的買収されることのないよう、黄金株【注】を発行し、経済産業大臣が保有しています。

【注】黄金株
 経営上の重要事項について、黄金株の保有者に拒否権がある。企業防衛策として高い効果がある。敵対的買収などを防ぐ効果があると考えられる。
黄金株は、経営陣の自己保身に使われることもあるので、発行が認められることは少ない。日本で黄金株を発行しているのは、INPEXのみである。

 INPEXは、2021年12月1日のレポートで投資判断を「強い買い」に引き上げた銘柄です。その時のレポートは、以下からお読みいただくことができます。

 2021年12月1日:利回り3.7~6.2%、12月決算の高配当株5選。INPEXを「買い推奨」に引き上げ

 株価は、2021年12月1日の938円からすでに109%上昇して1,960.5円となっていますが、それでもPER6.2倍、PBR0.56倍と、株価指標で見て極めて割安です。日本のエネルギー安全保障にとって重要な企業であることが、株価に織り込まれていないと考えられます。

 以下、長期の株価チャートをご覧ください。同社株価は2020年まで、原油・天然ガス価格下落を受けて下落していました。2021年以降大きく上昇しているとはいえ、2007~2008年の株価と比較すると、まだ低い水準にあります。

INPEX株価、月次推移:2007年1月末~2024年12月(23日)

INPEX株価、月次推移:2007年1月末~2024年12月(23日)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 INPEXを高く評価する点は、以下5点です。

【1】 日本最大の原油・天然ガス生産・開発企業。長年の先行投資が実り、今後生産量・埋蔵量とも拡大が続くと見込まれる

 原油・ガスの生産量・埋蔵量は国内最大で、海外20ヵ国に資源権益を有します。長い年月をかけて開発を進めてきた オーストラリア(イクシス)で先行投資が実り、生産量や確認埋蔵量が拡大する局面に入っています。インドネシア(アバディ)も2030年ごろ生産開始を目指し、開発が進んでいます。

【2】海外権益のほとんどが友好国に

 海外権益は、オーストラリア、インドネシア、中東などの友好国にあります。権益喪失の危機にあるロシアの「サハリン1」にも出資【注】しているが出資比率は低く、仮に撤退・減損という最悪の事態になったとしても影響は限定的と考えられます。

【注】INPEXは、サハリン1の権益30%保有する「サハリン石油ガス開発」の株式を6.08%所有

【3】技術的に難しい海底ガス田を開発

 技術的に難しい海底ガス田を開発、陸上にガスを誘導してLNG(液化天然ガス)に転換して日本などに輸出するプロジェクトを行っています。

【4】脱炭素にも積極的に取り組み

 2050年にCO2排出ネットゼロを目指し、(1)水素・アンモニア事業、(2)CCUS(CO2回収収・貯蔵・利用)、(3)再生エネルギー事業(地熱・風力など)・(4)メタネーション(合成メタン)・(5)森林保全などの事業を推進しています。

【5】株価割安、株主への利益還元に積極的

 PBR0.55倍と、株価は極めて割安と判断しています。

 また、日本企業として珍しいほど、株主への増配・自社株買いに積極的と言えます。自社株買いを、2022年1,200億円、2023年1,000億円実施、2024年も1,300億円実施する予定です。配当と自社株買いを合わせた株主への総還元性向は、2022年が44.1%、2023年が60.6%で、2024年は65%となる見込みです。

 一方で、不安材料もあります。特に私が重視しているのは、以下2点です。

【1】資源ナショナリズムのリスク

 最大のリスクは、資源ナショナリズムです。海外に保有する権益はいつでも資源ナショナリズムによって接収されるリスクがあります。現在、友好国中心に権益を保有しているとは言っても、その友好関係がなんらかの理由で崩れるリスクは常にあります。

 国交断絶にならない限り、さすがに無償で権益を没収されることは無いと考えられますが、それでも友好関係が崩れると不当に低い対価で権益を奪い取られるリスクが生じます。日本企業が保有する権益に対し、「環境アセスメントで問題あり」など難癖をつけて取り上げることが考えられます。

 友好国であっても法人税率をどんどん高めることで実質的に利益を取り上げられてしまうこともあります。INPEXもすでに海外事業で高率の法人税を取られています。

【2】脱炭素が進むことに伴うリスク

 世界中で、脱炭素に向けた取り組みが進む中、化石燃料ビジネスを展開する企業は、「環境税」などのペナルティを科せられるリスクがあります。これに対し、INPEXは2050年のCO2排出ゼロを目標としてさまざまな取り組みをしていますが、その効果が出るにはかなりの年数を要します。

 ただ、上記に挙げたリスクを勘案しても、先に解説した五つのポイントから、INPEXに投資する価値は高いと判断しています。

三菱商事、日本郵船、中部電力を買いと判断する理由

 三菱商事は、エネルギー事業だけでなく、エネルギー以外の事業も含めて、グローバルに幅広いビジネスを展開して成長していく企業と評価しています。詳細は、別の機会に説明します。

 日本郵船は、LNGタンカーで世界最大級の62隻を船舶管理しています。オイルタンカーも含め、エネルギー物流で重要な役割を果たしています。同社は現在、定期船ビジネスを行う持分法適用会社ONE社が最大の稼ぎ頭となっています。

 中東ルートが紛争で使えないために定期船市況が高騰し、一時的に利益水準が高くなっています。いずれ中東ルートが再開すれば、市況が低下し、日本郵船は減益になると考えられます。ただし、それを織り込んでなお、株価は割安で、長期投資する価値があると考えています。海運株についても、別の機会に詳しく解説します。

 電力株では現在、中部電力のみ、買い推奨しています。本来ならば、電力株をもっと幅広く推奨したいのですが、日本の電力株は不稼働原発を抱えるコストが重く、財務が悪化しています。財務内容を勘案した上で、中部電力のみを選別しています。

電力・エネルギー関連、その他の注目企業

 日立製作所(6501)や、三菱重工業(7011)は、電力関連の成長ビジネスを有しており、日本のエネルギー安全保障にとって大切な企業です。

 ただし、2024年に株価が大きく上昇していて、現時点で株価が割安とは判断できないので、今日のレポートでの推奨銘柄には加えていません。

 ENEOSホールディングス(5020)など、他にもエネルギー関連で注目できる銘柄は多数ありますが、株価割安度を考慮して、今回の紹介銘柄には加えていません。

 最後に「株トレ」新刊出版のお知らせです。ダイヤモンド社より8月に、以下、私の新刊が出版されました。

「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編」

 一問一答形式で、決算書の見方など、株式投資のファンダメンタルズ分析を学ぶ内容です。

2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編

(窪田 真之)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください