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株式投資で1月に気を付けるべき「アノマリー」って何?

トウシル / 2024年12月28日 8時0分

株式投資で1月に気を付けるべき「アノマリー」って何?

株式投資で1月に気を付けるべき「アノマリー」って何?

「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第61回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

今日のクイズ

 株式投資でよく「アノマリー」が話題になります。今日はアノマリーに関するクイズを出します。

 株式市場のアノマリーについての説明文【1】~【4】のうち、一つだけ誤りを含むものがあります。誤りを含む説明文はどれでしょう?

【1】アノマリーとは、経験的に観測される株式市場の「規則性」のことである。相場格言といわれるものに、アノマリーがよく含まれる。「落ちてくるナイフをつかむな(急落銘柄を買うと、さらに大きく下がることがある)」など。

【2】アノマリーとは、株式市場で繰り返し起こるパターンのことだが、なぜそうなるのか理由がはっきりしないものも多い。

【3】季節的に繰り返すことが多い株式市場の変動パターンも、アノマリーの一種である。
「セル・イン・メイ(5月に売れ:米国株は5月に天井をつけて株価が下がることが多い)」「夏枯れ(夏場に株式市場の売買高が減少して株が軟調になることが多い)」「クリスマスラリー(12月に株価が上がることが多い)」「掉尾の一振(とうびのいっしん)(12月末にかけて株価が跳ね上がること)」など。

【4】アノマリーとは、毎年、必ず繰り返す株式市場の変動パターンのことである。

「セル・イン・メイ」のフル・バージョン

「セル・イン・メイ(5月に売れ)」は、米国株に顕著に見られる季節性から、生まれた相場格言です。これは、全体の一部です。フル・バージョンは以下の通り。

「Sell in May and go away and take vacation, but remember to come back in September」(5月に売って立ち去り、夏休みをとれ。でも、9月に戻ってくることを忘れるな)

 これは、米国株の季節性から生まれた格言です。もちろん、毎年必ずそうなるというわけではありません。何か大きなイベント(リーマンショックなど)があると、それと異なる動きとなります。特に大きなイベントが無ければ、季節性からそういう動きになることが多い、ということです。

<米国S&P500株価指数の月別平均騰落率:1994年~2024年平均>

米国S&P500株価指数の月別平均騰落率:1994年~2024年平均の表
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 米国株は、けっこうこのパターンを繰り返します。上記は1994年以降の平均値ですが、1960年以降の平均をとっても同様の傾向が出ています。

 米国株の季節性は、米国経済の季節性によって引き起こされていると思います。米国経済は、クリスマス商戦のある10~12月に一番盛り上がり、1~3月は閑散期となります。4~6月からクリスマス商戦に向けて徐々に経済が盛り上がり、7~9月・10~12月にかけてクライマックスを迎えるというパターンを繰り返しています。

 GDP(国内総生産)は季節調整をした数字をみんな見るので、こうした季節性が分かりにくくなっています。しかし、米国民が肌で感じる経済は、季節調整前のものです。10~12月まで盛り上がっていた米経済が、1~3月に急にさびしくなったという実感が起こります。10~12月にかけて上昇していた米国株が1~2月に下がりやすいのは、そういう理由もあると私は考えています。

 日本株は、米国株の影響を受けるので、米国株と近い季節パターンがあります。

<日経平均株価の月別平均騰落率:1994年~2024年平均>

日経平均の月別平均騰落率:1994年~2024年平均の表
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

正解は…

 アノマリーについて、誤った説明は、以下です。

【4】アノマリーとは、毎年、必ず繰り返す株式市場の変動パターンのことである。

「必ず繰り返す」という部分が、誤りです。経験則から「繰り返すことが多い」が、必ず繰り返すわけではありません。まったく異なる動きになる年もあります。

迷信のように言われるだけで、ほとんど当たらないアノマリーもある

 季節性についてのアノマリーには、近年まったく当たっていないにもかかわらず、迷信のように、言われ続けているものもあります。例えば、「節分天井・彼岸底」がそうです。

 日本株が、「節分(2月2日)あたりに天井をつけて下がり、彼岸(3月20日前後)あたりに底をつけて反発する」ことが多かったことから言われたものです。

 昔、そのようなパターンになることが多かった記憶はあります。ただし、近年そのパターンはあまり見られません。にもかかわらず、たまにそのパターンに近い動きが見られると、「やはり節分天井になった」のように、妙に納得する人が多いのは事実です。

アノマリーとどう付き合うか?

 私は、ファンドマネージャー時代、説明がつかないアノマリーは一切、無視していました。ただし、なんらかの説明が可能で、繰り返し起こると考えられるアノマリーは意識していました。

 例えば、米国株の「セル・イン・メイ」「リメンバー・トゥ・カム・バック・イン・セプテンバー」は、季節的な経済パターンが引き起こすアノマリーとして意識していました。

 もう一つ、私が重視していたものに1月のアノマリーがあります。相場格言にはなっていませんが、何回も繰り返す理由があるので、今でも重視すべきと心得ています。

気になる1月のアノマリー

 1月は、リターン・リバーサル(上がったものが下がり、下がったものが上がること)が起きやすい月として有名です。

 10~12月までの流れが1月にガラリと変わることがあります。私がファンドマネージャーをやっていた25年間にも、ストラテジストになってからの11年間にも、頻繁に観測されています。

 10~12月の日経平均が急落した後に1月から急反発するケースと、10~12月の日経平均が急騰した後に1月から急落するケースがあります。

<1月のリターン・リバーサル:過去の事例>

◆1987年12月→1988年1月
 1987年10月にブラックマンデーがあって世界的に株が急落。12月まで下げ相場が続いたが、1988年1月から急反発。

◆1989年12月→1990年1月
 1989年12月末に日経平均は史上最高値(3万8,915円)をつけ強気一色だったが、1990年1月から急落。

◆1999年12月→2000年1月
 1999年12月までITバブル相場でIT関連株が急騰したが、2000年1月からIT関連株が急落。

◆2005年12月→2006年1月
 12月までミニITバブル相場で小型成長株が急騰したが、1月からライブドアショックで小型成長株が急落。

◆2008年12月→2009年1月
 10月にリーマンショックが起こり12月まで景気敏感株が急落したが、1月から景気敏感株が急反発。

 上記は、1月に極端なリターン・リバーサルが起こったケースです。小さなリターン・リバーサルはもっとたくさん起こっています。例えば、2017年12月まで景気敏感株が大きく上昇していましたが、2018年1月から急落しました。2018年12月まで景気敏感株が急落していましたが、2019年1月から急反発しています。

 さて、2025年はどうなるでしょうか? 1月6日からの相場をじっくり見たいと思います。

1月にリターン・リバーサルが起こるのは「やるべきことは年内に」と考える人間心理が原因

 アノマリーといわれているものには、ただの偶然もあります。たまたま過去がそうだっただけで、今後も同じことが起こる理由が何もない場合もあります。私は、ファンドマネージャー時代、根拠の無いアノマリーは無視して運用してきました。

 ただし、「1月に相場の流れが変わる」アノマリーだけは、無視することができませんでした。何回も繰り返し起こるからです。

 1月に相場の流れが変わるのは、偶然ではありません。それが起こりやすい理由がはっきりあります。それは、「やるべきことは年内にやっておこう」と考える人間心理が原因だと思います。その結果、以下のパターンを繰り返しています。

◆みんなが強気で10~12月に株が強いと、年明けに下落

 多くの人は、今年やるべきことは今年中に済ませようとします。新しい年に向けて、準備すべきことは年内に準備しておこうとします。例えば、来年、日本株が大きく上昇するというのがコンセンサスになっているとします。すると、多くの人は、年内に株を買ってしまおうと考えます。「株を枕に越年で、よい初夢を」と考えるわけです。 

 ところが、ほとんどの人が年内に株を買ってしまうと、皮肉なことに年明けから株の買い手がいなくなります。そこで1月には相場が崩れやすくなります。

◆みんなが弱気一色なら10~12月が弱く、年明けに上昇

 弱気がまん延していると、多くの人は年内に株を売ってしまおうと考えます。株なんか持っていたら、安心して越年できないというわけです。この場合は、年明けにはもう売り手がいなくなるので上昇しやすくなります。

◆強気弱気が混在していると、リバーサルは起きない

 10~12月に強気と弱気が混在して方向感のない相場となると、1月に相場の転換は起こりません。リターン・リバーサルが起こるのは、あくまでも10~12月になんらかのコンセンサスがあって、相場が一方向に動いたときだけです。

 その意味では、今年の10~12月の日経平均には方向感がありません。来年の見方が強弱に分かれているため、「年内に買わなければ」とか「年内に売らなければ」というコンセンサスは無いと思います。

 気にしているのは米国株です。米国株には強気見通しが集中しているので、世界の投資マネーが年内のうちに投資資金を米国株に集中させる動きが出ていた可能性があります。

 年明けにその反動が出る心配があります。米国のトランプ次期政権の政策次第で、1月の米国株には波乱が起きる可能性もあります。

テクニカル・ファンダメンタルズ分析を詳しく学びたい方へ

 私の「株トレ」新刊が、8月にダイヤモンド社から出版されました。お知らせします。

2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編

「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ ファンダメンタルズ編」の書影

 一問一答形式で、株式投資のファンダメンタルズ分析を学ぶ内容です。

 2021年12月出版の前作で、テクニカル分析を学ぶ「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ」の続編です。

(窪田 真之)

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