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住宅購入、「頭金」はいくら用意すればいい?<7-1>夫婦、住宅ローンを学ぶ

トウシル / 2025年1月3日 16時0分

住宅購入、「頭金」はいくら用意すればいい?<7-1>夫婦、住宅ローンを学ぶ

住宅購入、「頭金」はいくら用意すればいい?<7-1>夫婦、住宅ローンを学ぶ

これまでのあらすじ

 信一郎と理香は小学生と0歳児の子どもを持つ夫婦。第二子の長女誕生と、長男の中学進学問題で、教育費の負担が気になり始め、毎週金曜夜にマネー会議をすることになった二人。一家の条件に合う物件を見つけるが、頭金など資金面で悩み始める…。

藤元家の相関図

 信一郎が勤める会社の福利厚生の一つにFP相談がある。過去、教育費と老後を含んだライフプランを立ててもらったことのあるFPに面談を申し込んだ二人は、改めてメガネのFP氏と再会した。

「住宅ローンというのは、投資信託や債券などと同じ、金融商品の一つなんですよ。銀行によって、金利や付帯条件もさまざまに違います」

「え、そうなんですか?」

 夫婦は顔を見合わせる。

 信一郎は「どこの銀行で借りても大差ないだろう」と思っていたし、理香に至っては、「不動産会社が勧めてくる住宅ローンの中からしか選べないのだ」と思っていたのだ。

「銀行にとって、住宅ローンは、お客様と一生のお付き合いに発展する、最も重要な[金融商品]です。だから、商品によって、さまざまな個性があるんですよ。例えば、お二人のようなダブルインカムのご家庭では、夫婦が別々に住宅ローンの申し込みをして、それぞれが返済していく「ペアローン」を選ぶ方も少なくありません」

 一つのローンを親子の間で引き継ぐ[親子リレー返済]などもありますよ、という言葉に、理香は目を見張った。

「そんなのもあるんですか…」

「変動金利と固定金利があるっていうのは知ってましたが…今の住宅ローンって、バリエーション豊富なんですね」

「はい。省エネ基準に適合した住宅なら、住宅ローン控除額が大きくなる、などの制度変更もありました。住宅自体も進化しているのですが、住宅ローンもそれに応じて年々、進化しているんですよ」

 FPは、夫婦に見えるようにパソコン画面を調節し、住宅ローンの比較ページを開いて見せた。

「同じ金利の住宅ローンでも、銀行によっては、借主ががんや成人病にかかった際はローン残高が減額されたり、一時金がもらえるような保証がつけられるローンもあります。金利も…例えば、3,000万円は変動金利で、残りの3,000万円は固定金利で…など、変動金利と固定金利を組み合わせた[ミックスローン]という商品もあります」

 自分たちが考えていたよりも住宅ローンには柔軟性があることを知り、夫婦は大きな溜息をつく。だが逆に、選択肢が多いだけに余計に迷ってしまいそうだ。信一郎は改めて、ここが人生の「支出の正念場」だと腹をくくった。

 問題は、自分たちが7,000万円もの住宅ローンの審査に通るかどうか。通ったとしても返済で苦しむことにならないかどうか。さらには教育資金と並走するはずの住宅ローンを支払い終えたときに、老後資金が残っているかどうかだ。

信一郎と理香のマネーミーティング

 そのためには、最初に支払うべき「頭金」が大きく今後を左右してくるはずだ。キャッシュをすべて突っ込むのは間違っているが、少なすぎるとその後の返済が辛くなる。「いい塩梅」とはどれくらいなのか。信一郎と理香の金曜のマネーミーティングは、その話で煮詰まり、先へ進まなくなっていた。

「あのう…。頭金って、普通はどれくらい用意するものなんでしょうか?」

 心配そうな信一郎の問いに、FP氏はメガネをきらりと光らせる。

「一般的には、物件価格の10%を頭金としてご用意できると、住宅ローン審査が通りやすくなる、と言われています」

 夫婦が購入を検討しているマンションの価格は7,000万円。その10%なら、700万円だ。
FP氏によると、現在は頭金を用意しなくても住宅ローンを組むことは可能だが、返済額が多くなったり返済期間が長くなったりするため、無理のない範囲で頭金を入れる人が多数派だとのことだ。

「加えて重要なのは、住宅購入の際にかかる諸費用です」

「諸費用?」

 FP氏の口から出てきた新しい言葉に、二人はまた首をかしげる。

 住宅購入の場合、中古/新築、戸建て/マンション、建売/注文住宅の差はあるが、印紙税、登記費用、不動産取得税、固定資産税清算金、仲介手数料などの「諸費用」がかかるのだ、とFP氏は説明した。

「ケースにもよりますが、新築マンションの場合で物件価格の3~5%前後、建売住宅や中古住宅は同じく6~8%前後、注文住宅は土地・建物の総額の10~12%前後が目安です。7,000万円のマンションの場合、約200万円~350万円が必要です」

「ええ! そんなにかかるんですか!」

 驚いた夫婦は顔を見合わせた。けっこうな金額だ。

不動産会社で、頭金以外にもすごい諸費用が掛かることを知って驚く夫婦

マイホーム購入時にかかる諸費用例

●ローン保証料:住宅ローンの申し込み時にローン保証会社に支払う費用
●事務手数料:住宅ローンの申し込み時に借入先の金融機関に支払う費用
団体信用生命保険料:返済期間中のもしもの死亡や病気に備えて加入する生命保険の保険料。民間ローンの場合無料も場合も多い
●火災保険・地震保険:返済期間中の火災や地震などに備えて加入する損害保険料
●印紙税:住宅購入の契約書を取り交わした時に収める税金
●登記費用:登記時に収める登録免許税および司法書士の手数料
●不動産取得税:不動産を取得した時に収める税金
●消費税:不動産(土地は除く)を購入した時に収める消費税
●仲介手数料:物件購入時の仲介業者に支払う費用
●住宅ローン代行手数料:住宅ローン手続きをしてもらった不動産会社に支払う費用

「中でも、仲介業者に支払う仲介手数料は、物件価格の4~6%+消費税となるため、7,000万円の物件を購入される場合は…」

 FP氏は電卓をたたいて見せる。

「4%として計算すると、諸費用合計は237万6,000円ですね」

「うっ」

「ぐぅ…」

 二人は同時に胃を押さえた。

「じゃあ最初の段階で、頭金と諸費用を合わせて、約1,000万円が必要、っていうことね…」

「もちろん、現金で即日支払うのではなく、金利に上乗せして支払う方法が選べるローンもありますし、諸費用をまとめて別途借りて、返済ローンを組むこともできます」

「な、なんかめんどくさそう…」

「うん。ローンが二つ走るのも嫌だよな」

 理香と信一郎は顔を見合わせた。

 二人の独身時代からの預貯金は、そこそこある。信一郎は金融資産以外に約300万円のキャッシュを銀行に預けてあり、理香も、特に使う予定のない約200万円以上の現金が銀行にある。
二人の共同預金としては、生活防衛費として300万円ほどを確保してある状態だ。

「あのぅ…実は…」

 信一郎が頭をかきながら言う。

「うちの両親が、家を買うなら500万円くらい、援助してくれるって言い始めていて」

「え! そうなの?」

 理香が驚いて信一郎を見る。

「いい年して、親から援助なんて恥ずかしいし、その分は自分たちのために使ってくれって言ったんですけど」

 私たちがしたいことがそれなのよ、と笑う信一郎の母の笑顔が頭をよぎる。

 お前にやるんじゃない。健と美咲のために使ってほしいんだ、と言う信一郎の父の言葉も思い出す。

「実はうちも…私立に進学するかもって話をしたら、孫にそれぞれ200万円ずつ贈与するって言いだしてて…」

 理香も照れながら言い、信一郎はびっくりして理香を見た。

「ええ? 初めて聞くぞ、そんな話」

「まだウンて言ってないもん。軽々しくもらえる金額じゃないでしょ? 中学、高校と進学するときに100万円ずつ、健と美咲の進学費用で贈与してくれるって言ってるの。私もこの年で親のすねをかじるのは恥ずかしくて、なかなか言い出せなくて…」

 照れながら下を向く二人に、FPは温かい視線を向ける。

「ご両親からの援助があるなら、前向きに検討してみてはいかがですか? 頭金が大きいほど、返済額や返済期間は減りますし、その分、ご両親へ再度、ご援助することもできますよ」

「もらっちゃった場合、税金って大丈夫なんでしょうか? 贈与税で、場合によっては半分くらい税金で持っていかれるって話も聞いてるんですけど」

 心配げな理香にFPは新たなページを開いて見せた。

「住宅購入のために資金を援助してもらって、一定期間中に購入・新築・増改築等の契約をすると、贈与税が非課税になる「住宅取得等資金贈与の非課税特例」が使えます。お二人が購入しようとしている物件は、「耐震・省エネ・バリアフリー」性能の高い、省エネ水準をクリアしている新築物件のため、一般住宅より非課税枠が500万円アップします。ぜひ前向きに検討してください」

■住宅取得等資金贈与の非課税特例(非課税限度額)

契約時期 住宅の種別(※1) 非課税枠(※2)
2022年1月1日~2026年12月31日 一般住宅 500万円
一定基準を満たす住宅 1000万円
※1「一定基準を満たす住宅」は住宅性能表示制度、の「断熱性能等級5以上かつ、一次エネルギー消費量等級6以上の住宅(2024年7月以降に建築された新築住宅等)・断熱性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上(中古住宅・買取再販住宅・2023年中に建築確認を受けるか、または2024年6月末までに建築された新築住宅)」、「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物」、「高齢者等配慮対策等級3以上」のいずれかを満たす住宅。

固定金利と変動金利、どっちがトク?<7-2>夫婦、住宅ローンを学ぶ>>来週金曜公開予定!

(中桐 啓貴)

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