米国の景気が良過ぎて株価急落の理由とは?今週も米物価指標やトランプ関税発言が相場を揺るがす!?
トウシル / 2025年1月14日 13時15分
米国の景気が良過ぎて株価急落の理由とは?今週も米物価指標やトランプ関税発言が相場を揺るがす!?
今週の株式市場は、あまりに良過ぎる米国の景気・雇用情勢のせいで逆に株価が下落する流れが加速するかもしれません。
なぜ好景気なのに株価が下がるか、その理由は米国の長期金利が上昇しているから。
長期金利が上昇すると、高い利回りを求めて株式市場から債券市場にお金が流出します。また、金利の上昇で将来の景気失速が視野に入ってくることも株価の下落圧力になります。
さらに来週1月20日(月)にはいよいよ米国でトランプ次期大統領の就任式が行われます。
トランプ氏は2025年に入ってからも「パナマ運河やグリーンランドの獲得に軍事力行使もありうる」「カナダは米国51番目の州になるべき」といった過激な発言を繰り返し、日本などの同盟国も含めた全輸入品に対して10~20%の一律関税を課すための緊急事態宣言も検討しているようです。
過激な脅し文句の裏で、したたかに米国の実利を狙うトランプ流戦略に過ぎないという見方もありますが、20日の大統領就任以降、トランプ氏が手始めにどんな政策を実行に移すかはいまだ未知数。
株式市場は先行き不透明を嫌うため、トランプ次期大統領が減税や規制緩和などの株価に優しい政策にとりかかるまで米国株を中心に様子見姿勢が続きそうです。
今週は14日(火)に米国の12月PPI(卸売物価指数)、15日(水)に12月CPI(消費者物価指数)、16日(木)に12月小売売上高といった米国の物価高再燃を占う重要な物価・景気指数も発表になるため、さらに注意が必要です。
12月前半は飛ぶ鳥を落とす勢いで上昇していた米国株も12月25日のクリスマス以降は非常に軟調に推移。機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は先週、前週末比1.54%安と大きく下落しました。
17日(金)発表の米国12月雇用統計の非農業部門新規雇用者数が前月比25.6万人増と予想を上回り、失業率が4.1%に低下するなど雇用市場が良過ぎたことで長期金利が上昇したことが株価急落の主因でした。
日本が祝日の13日(月)のS&P500種指数は10日(金)終値から0.16%上昇。
辛うじてプラスでしたが、一時は米国大統領選挙が行われた2024年11月5日の終値を下回り、選挙後のトランプ相場の上げ幅全てを失いました。
一方、日経平均株価(225種)の10日(金)終値は2024年12月末比で704円(1.8%)安の3万9,190円と米国株に連動して下落。
経済損失20兆円超といわれる米国カリフォルニア州ロサンゼルスの大規模火災を受け、損害保険会社の東京海上ホールディングス(8766)が前年末比9.9%安となるなど保険セクターが大きく売られました。
また、日経平均株価に対する影響度が最も高い「ユニクロ」のファーストリテイリング(9983)が9日(木)に2025年8月期第1四半期(2024年9-11月)の決算を発表。22%の最終増益だったものの、中国市場が予想を下回る減収減益だったことで前年末比9.5%安だったことも響きました。
ファーストリテイリング株に関しては1月末に日経平均株価に対する組み入れ比率引き下げリスクも浮上しており、今後も日経平均株価の下げ圧力になりそうです。
ただ先週の日本株に関しては、台湾の鴻海精密工業や韓国サムスン電子の好決算を受けて半導体株が大幅高。
半導体検査装置のアドバンテスト(6857)が前年末比12.9%高となるなど独歩高でしたが、今週はさすがに米国ハイテク株の下げに連動しそうです。
三連休明け14日(火)の日経平均終値は前週末比716円安の3万8,474円でした。
先週:長期金利上昇、FRB利下げ休止見通しで米国株急落!日本の半導体株は踏ん張る!
2025年初めての本格的な取引開始となった先週は、トランプ大統領の過激発言やロサンゼルスの山火事など米国発のニュースが目立ち、株価も米国株主導で下落しました。
株価下落の最大要因は米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りが13日(月)には一時4.8%台を突破するなど、5%越えも視野に入るほど上昇したことです。
長期金利上昇の理由は、先週発表された米国の雇用・景気指標の多くが予想を上回る好結果だったから。
10日(金)発表の12月雇用統計だけでなく、7日(火)発表の11月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も予想を上回りました。
同日に発表されたISM(全米供給管理協会)の12月非製造業景況指数も予想以上となり、同指数の仕入価格指数は年率6%の物価高が続いていた2023年前半の水準まで伸び率が加速しています。
8日(水)に公表された前回12月18日終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録でも、トランプ次期政権による貿易や移民に関する政策変更で今後、インフレ見通しの上振れリスクがあるという見解が示されました。
12月FOMCでは2025年に計2回(0.5%)の利下げを行う見通しが示されましたが、今後の景気や物価動向次第では利下げ休止期間が長引く可能性が高まったことも米国株安につながりました。
7日(火)には米国ラスベガスで開催された世界最大級のテック見本市「CES」で、AI(人工知能)関連の花形株である米高速半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)のジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)が基調講演。
産業用ロボットや自動運転車の訓練を行うAIの開発について語るなど夢のある内容でしたが、市況の悪化や好材料出尽くしで同社の株価は前週末比5.93%安と大きく下落しました。
ファンCEOは「量子コンピューターの実用化には20年程度かかる」とも発言。
アルファベット(GOOG)が親会社のグーグルが開発した超高速の量子コンピューターの早期実用化に懐疑的な見方を示しました。
この発言を受けて日米の量子コンピューター関連株が急落。日本株では、システムを高速化させるソフトウエア開発のフィックスターズ(3687)が前年末比14.0%下落しました。
先週、2025年の取引がスタートした日本株の週間業種別騰落率でプラスだったのは銀行セクターのみ。
国内の長期金利の指標である10年国債の利回りが10日(金)に1.198%まで急上昇したことで、金利上昇が収益増加につながる銀行株だけがなんとか踏みとどまった格好です。
逆に、トランプ氏の高関税政策の悪影響が及ぶ自動車株は主力のトヨタ自動車(7203)が6.8%安、ホンダ(7267)との経営統合ニュースで急騰していた日産自動車(7201)が5.5%安となるなど反落。
トランプ関税で世界的な貿易・通商活動が停滞する懸念から海運、商社株も大きく下げ、日本郵船(9101)が5.7%安、三井物産(8031)が7.6%安でした。
一方、半導体関連株は韓国や台湾向け売上比率が高い超純水装置メーカーの野村マイクロ・サイエンス(6254)が30.7%高、半導体切断装置のディスコ(6146)が12.3%高となるなど中型株から大型株まで幅広く買われました。
今週:米12月物価指数次第で暴落も?米銀や台湾TSMCの決算で雰囲気変わる!?
米国では強い雇用市場とトランプ次期政権の物価高につながりやすい政策発動見通しを受けて、インフレ再燃が懸念されています。
そのため、今週最も注目すべき経済指標は15日(水)発表の12月CPIでしょう。
前回11月のCPIは前年同月比2.7%増と予想通りでしたが、前月10月の2.6%増より伸び率が加速しました。
今回の12月CPIは前年同月比2.9%上昇とさらに物価上昇率が加速する予想になっています。予想以上の物価上昇率になると、株価の急落もありそうです。
先週の日経平均株価は半導体株の頑張りで1.8%の下落で踏み止まりましたが、時価総額の大きな大型株比率が高いTOPIX(東証株価指数)は前年末比2.5%安とそれ以上に大きく下落しました。
14日(火)早朝の為替相場が1ドル=157円60銭台で高止まりしているにもかかわらず、今週もトランプ高関税政策に対する懸念で外需株、国内の金利上昇などの悪影響で内需株が幅広く売られる流れが続く恐れもあります。
全体相場が反転上昇するきっかけになりそうなのが半導体株の健闘です。
16日(木)には半導体受託生産世界一の台湾積体電路製造(TSMC)の決算も控えており、その結果次第では半導体関連株を中心に株価が盛り返す可能性もあるでしょう。
また、今週からは米国企業の2024年10-12月期決算発表も始まります。
15日(水)には米国最大の銀行であるJPモルガン・チェース(JPM)や投資銀行大手のゴールドマン・サックス・グループ(GS)など銀行株が相次いで決算発表。
米国の銀行株にとって足元の金利上昇は収益増につながっている可能性が高いため、好決算連発で全体相場の雰囲気好転に期待したいものです。
実際、先週の力強い雇用・景気指標が示すように米国経済自体は順調そのもの。
トランプ次期政権に対する警戒感が期待感に180度転換して、来週20日(月)の大統領就任式以降のご祝儀相場を先取りするような反発上昇が起こる可能性に望みを託したいところです。
(トウシル編集チーム)
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