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「元利均等返済」と「元金均等返済」どっちがトク?<7-3>夫婦、住宅ローンを学ぶ

トウシル / 2025年1月17日 16時0分

「元利均等返済」と「元金均等返済」どっちがトク?<7-3>夫婦、住宅ローンを学ぶ

「元利均等返済」と「元金均等返済」どっちがトク?<7-3>夫婦、住宅ローンを学ぶ

これまでのあらすじ

 信一郎と理香は小学生と0歳児の子どもを持つ夫婦。第二子の長女誕生と、長男の中学進学問題で、教育費の負担が気になり始め、毎週金曜夜にマネー会議をすることになった二人。息子の進学に合うベストな物件を見つけ、夫婦はいよいよ、住宅ローン選びを開始する…。

藤元家の相関図

「用意できる頭金は700万円」「返済方法は変動金利」を選択した夫婦に、「さらにもう一つ、選んでいただきたいことがあります」とFP氏は新たな課題を持ちだした。

 返済の際、「元利均等返済」と「元金均等返済」のどちらかを選ぶ必要がある、という説明に、夫婦はそろって首をひねった。

「もと…え? なんでしたっけ?」

「どう違うんですか? それ?」

「元利均等返済」と「元金均等返済」の解説

「元利均等返済の場合、返済開始当初は、利息が占める割合が多いので、元金均等返済に比べると元金の減り方が遅くなるため、最終的な総返済額は多くなります。一方、元金均等返済は、最初から利息分も含めて均等割りするので、毎月の返済額は返済終了に近づくにつれて、返済額が減少します。さらに、最終的な総返済額は元金均等返済のほうが少なくて済みます」

「みなさん、どちらを選ぶ方が多いんでしょうか?」

「返済総額が多くても返済額が一定の、元利均等返済を選ばれる方がほとんどですね」と言ったFP氏に、理香が食いつく。

「なんでですか? ええと、元金ナントカのほうが、最終的な返済額は少なくて済むんですよね?」

「金利上昇時の救済措置である、1.25倍ルール、5年ルールは、元利均等返済のみ適用され、元金均等返済には適用されません。それに、返済額が一定であるほうが、今後のライフプランを建てやすい、というのが大きな理由です」

  元利均等返済 元金均等返済
総返済額 多い 少ない
毎月の返済額 最初から最後まで一定額 最初は多いが徐々に返済額が減る
1.25倍ルール、5年ルール 適応される 適応されない

 なるほど、と二人はうなずきあった。

「それにしても選ぶことが多すぎて、本当に大変ね」

「それだけしっかり考えて選ぶ必要があるってことだよ。安易に決めないで、相談に来て本当によかった」

 夫婦の言葉に、FP氏はにっこりと笑った。

「今、しっかり悩んで迷っておけば、きっといろいろ選択した後の納得度が違いますよ」

 確かに、と夫婦はうなずいた。何も知らずに提案されたローンを選んだあと、今のような情報が入ってきたら、きっと「これで本当によかったんだろうか?」と、長い返済期間を悩んで過ごすことになるかもしれない。

 知識も理解もついていくのがやっとだが、決して無駄にならないはずだ、と夫婦は、疲れかけていた気力を持ち直し、椅子に改めて座り直した。

 ただし、もっと重要なことがあります、とFP氏は顔を引き締めた。

「最も重要なのは、月々の返済額が家計の負担になりすぎないかどうか、です」

 試しに計算してみましょう、とFP氏は低金利の住宅ローンを一つ選び、シミュレーションサイトに移動した。

 返済期間年数を入れる空欄にカーソルを合わせ、FP氏は夫婦を見た。

「できるだけ早くに返済し終えたいと思ってたんですが…」

 信一郎が定年を迎えるまでの18年を入れてみると、月々の返済額は28万円を超え、夫婦はぐったりとうなだれた。

「今の賃貸料金より多くなるのはナシだよ」

「そうね…。でもできるだけ早く返したいから、少し家計を切り詰めることも考えて…」

 そう言いかけた理香に、FP氏は首を横に振って見せる。

「返済を焦ってはいけません。一定条件を満たしていれば、住宅ローンを借りてから最大13年間は、住宅ローン残高の0.7%を、所得税・住民税から控除できる『住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)』という制度があります」

「え、そうなんですか?」

「はい。最初の年は自分で申告しなければなりませんが、その後の最大12年間はお勤め先の年末調整で申告できます」

 返済を焦って、生活を切り詰めたり大幅に生活スタイルを変える…というのはもっとも避けてほしいことだ、とFP氏は真剣な顔で言った。

「何のために住宅を購入するのか、に立ち戻ってください」

「…そうね。家族で明るく楽しく過ごすために、家を買おうと思ったんだった…」

 理香がはっとした顔で信一郎を見る。

「うん。住宅ローンを早く返済するために、今、うまく回ってる生活を変えるって変だよね」

 信一郎もうなずく。

「返済期間が長い、ということを負担に感じすぎないでください。返済期間が長くても、返済金額に余裕があれば、それだけ、資産形成に回せる金額も時間も増える、ということです」

 返済期間を35年にしてFPは試算をし直す。今度は約15万円ほどが算出され、二人はほうっと溜息をついた。

「現実的ね」

「今の賃貸料金より少ないのか…。そうか、その分を投資に回したり、預金してもいいわけだ」

 そのとおりです、とFP氏は大きくうなずく。

「ご夫婦そろって健康で働き続けられる環境も大事です。住宅ローンのために心労が募って、健康を害するような状況は避けていただきたい」

 住宅ローン名義の契約者が死亡または高度障害状態になった場合、それ以降の住宅ローンの支払いが免除され、遺族に住宅を遺すことができるという「団体信用生命保険(団信)」に加入ができる、とFP氏は最後に大切な説明を加えた。

「言い方は悪いけど、最悪、死んだらチャラにできるってことか…」

「うーん。なら急いで払い終わる必要ないかもね…」

 生活を切り詰めて全力で仕事をがんばって、急いで払い終えた直後に死んだりしたら、損じゃない?

 身も蓋もない理香の言葉に、FP氏と信一郎は苦笑した。が、それもある意味、理解できる感覚だ。

 ほーっと息を吐き、理香は椅子の背中にもたれかかった。情報量が多すぎて、今日はもう、いっぱいいっぱいだ。

「今日はいったん帰って、二人で何を選ぶか、どの住宅ローンがいいか、相談してきます」

「はい。お二人でよく相談なさって、住宅ローンの候補もある程度絞って、後日改めてお越しください。そのときに、前回建てたライフ&マネープランをもう一度試算しなおしてみましょう」

「はい…」

 二人は肩で息をしながら深くうなずいた。

住宅ローンも人生も「万が一」の備えは必須!<7-4>夫婦、住宅ローンを学ぶ>>来週金曜公開予定!

(中桐 啓貴)

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