米国に「黄金時代」が到来!米中AI戦争はイノベーション進展のサイン
トウシル / 2025年2月3日 16時47分
米国に「黄金時代」が到来!米中AI戦争はイノベーション進展のサイン
年明けの米国株高は「1月効果」のアノマリーを期待させる
1月の米国市場ではS&P500種指数は+2.7%、ダウ工業株30種平均は+4.7%でした。S&P500は23日に過去最高値を更新した後の27日は「DeepSeek(中国製AI)ショック」でエヌビディアなど大手テック株が下落した一方、業種別株価指数でみると「通信サービス」「ヘルスケア」「金融」「素材」「消費財」「資本財」などが堅調でセクターローテーションが機能しました。
1月相場がプラスで終わり、「1月効果(January Barometer)」と呼ばれるアノマリーを期待させます。1月のリターンが年全体の基調をおおむね予兆するという経験則です。1月20日の就任演説でトランプ大統領は「米国の黄金時代(Golden Age)が今始まる」と宣言しました。
就任日以降に約100本の大統領令に署名し、関税引き上げや不法移民の強制送還実施を示唆した一方、各種減税・規制緩和・歳出削減・低金利方針も表明。警戒されたほど過激でなかった政策遂行に市場は安堵(あんど)しました。
昨年10-12月期の企業決算発表が金融業を皮切りに総じて堅調で、同期の米・実質GDP(国内総生産)速報値の伸び(前期比年率換算)も+2.3%と底堅く、GDPの約7割を占める個人消費が+4.2%と強かったことが注目されました。
図表1で示すとおり、S&P500は第2次大戦終了年(1945年)から1月末まで約455倍に成長しました(年率平均は+9%)。配当込み総収益は年率平均で二桁超です。複利効果も期待しながら米国株への長期分散投資をコアに据える資産形成を維持したいと思います。
図表1:米国株式にはすでに「黄金時代」が見てとれる
「DeepSeekショック」はAI革命の進展を促す契機に
先週は「DeepSeek(ディープ・シーク)ショック」が米国市場で波紋を広げました。中国がEVでの勝利(BYDの販売台数は世界1位)に続き、AI(人工知能)でも進歩していることは知られていましたが、新興企業DeepSeekがコストを抑えた高性能LLM(大規模言語モデル)のオープンソース生成AI(R1)を1月20日に公表。
生成AIの開発には高額なAI半導体(GPU)を大量に使い多くのデータを読みこなせるのが一般的ですが、コストが約10分の1でも同社製生成AIがオープンAIのChatGPTに匹敵する性能だった驚きを受け、AI半導体(GPU)最大手のエヌビディア株は27日に急落しました。
ただ、23日にAIの規制緩和に関わる大統領令に署名したトランプ大統領は「安価な方法があるのはいいことだ」と述べ「米国への警鏡(Wake Up Call)だ」と発言。エヌビディアのジェンスン・ファンCEOも「訓練から推論への完璧な例をディープシークが見せた」と評価しました。
一方、中国製AIには利用者情報収集や安全保障面で懸念があり、米国海軍では「仕事でも個人でもDeepSeek利用を控えるよう指示した」と報道されました。
1月21日に同大統領は4年総投資額が5,000億ドル(約78兆円)に及ぶ「スターゲート計画」(データセンター建設と電力供給拡大)をソフトバンクグループCEO、オープンAICEO、オラクルの共同創業者兼会長を従えて発表。その後「AIの開発競争で中国に負けるわけにはいかない」とも発言しました。
就任後に「米国をAIの世界首都にする」と宣言した大統領にとっては当然の言動です。これを契機に、AI開発と普及のスピードが加速して「AIの利活用コスト」は低減していくと予想します。特に、AI半導体を使う側(ソリューション・ソフトウエア企業など)に恩恵が及ぶのは想像に難くありません。
S&P500の「強気相場」(直近高値から20%以上下落して以降の上げ相場)は、生成AIが登場する直前の2022年10月から約27カ月(69%上昇)に至っています。
それでも(図表2で見る通り)、第2次大戦後の強気相場と比べるとやや短め、AI相場は1990年代のインターネット相場と類似点が多く、現在はその途中で強気相場の終焉(しゅうえん)にはまだ距離があることもイメージできそうです。
図表2:米国株式の「強気相場」の持続性を振り返る(第2次大戦後)
2025年末に向けたS&P500のメインシナリオを維持
DeepSeekショックを契機に「米中AI戦争」が本格化するとの見方が浮上しています。今後想定される事態は、米国政府による「中国製AIの利用規制」や「中国向けAI半導体の輸出規制強化」でしょう。とは言うものの、半導体、ネット、PCなどイノベーションの普及にはコスト低減が伴ってきました。
コスト低減がAIの進歩と利活用を後押しし「AIを使う側(企業)」の労働生産性向上と付加価値増加に寄与するとみられます。こうした中、独自の開発環境(CUDA)を武器とするエヌビディアの高性能AI半導体の優位性や利益成長もしばらく続きそうです。
結果として、生成AIのAGI(汎用性AI)への進化が早まり、幅広い産業への導入と利益成長を促すトレンドは総じて変わらないでしょう。図表3は、大手テック企業を主力とするナスダック100指数ベースとS&P500ベースのEPS(1株当たり利益)の暦年実績と2024年、2025年、2026年の予想EPS(市場予想平均)を示したものです。
ナスダック主力株の高成長がけん引し、S&P500ベースのEPSは2025年に約14%増益、2026年に約12%増益と連続して最高益を更新する見込みです。S&P500ベースの予想PER(株価収益率)は約22倍で「割安」とは言えないものの、利益成長期待が米国株式の強気相場を支えるベースとなりそうです。
筆者は、2025年末に向けては翌2026年の予想EPS(305.42)を視野に入れてS&P500のレンジ(上値と下値)が切り上がっていくと見込んでいます。
図表4は、2022年以降のS&P500と恐怖指数(VIX)の推移を示したものです。2月は市場の恐怖感が高まる(例:トランプ関税、長期金利上昇、景気鈍化観測、中国リスクなどが警戒される)場面もありそうで、株式に求められるリスクプレミアムが拡大(PERが縮小)して株式需給が悪化すると株価は一時的に下落する可能性はあります。
PER(株価収益率)を現在の22倍前後と仮定すると、2025年末に向けたS&P500のメインシナリオは「6,600±200」程度と試算できます。リスク要因顕在化で株価が下落する場面では、粛々と「Buy the dips」(押し目を買う)や「Just keep buying」(投資し続ける)との格言に象徴される時間分散投資を長期の視野で続けていきたいと思います。
図表3:企業業績は2025年も2026年も最高益更新が見込まれている
図表4:S&P500は上下しながら業績見通しに収れんしていく見込み
(香川 睦)
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