トランプ関税要因は方向感出ず、かく乱材料に!
トウシル / 2025年2月5日 16時8分
トランプ関税要因は方向感出ず、かく乱材料に!
トランプ大統領、カナダとメキシコに対して追加関税を課す大統領令に署名とその後
トランプ大統領は2月1日、カナダとメキシコに対して追加関税25%を課す大統領令に署名しました。これを受けて、週明けの東京市場ではドル/円がドル高に反応し、一時1ドル=155.90円近辺まで円安が進みました。
しかし、関連銘柄を中心に日本株が売られ、日経平均株価が一時1,000円を超える下落となったことから世界株安が懸念され、1ドル=154円割れ寸前まで円高となりました。ただ、その後カナダ・メキシコの関税発動が1カ月延期と報道されると市場に安心感が広がり、1ドル=154円台後半に戻りました。
今回のカナダとメキシコに対する追加関税25%賦課については、先週、事前に何回か報道されていました。その度にドル高に反応していたため、実際に発動されるとの報道で再びドル高に反応し、日経平均が関連会社の業績悪化懸念から1,000円超下落したのは意外でした。十分に織り込み済みではなかったということになります。
おそらく1月20日の大統領就任直後に、各国に対する一律10%の関税が実行されなかったことから、カナダ・メキシコへの25%関税は実現しない可能性が高まったと楽観視していたのでしょう。それが実際に発動され、現実のものとなったことから市場は驚いたようです。
ドル/円は、トランプ関税発動によって円安→円高→円安と動きましたが、1月のレンジ「1ドル=154~159円」は抜けませんでした。
12月はFRB(米連邦準備制度理事会)は利下げ、日本銀行は利上げが見送りとなりましたが、FRBの「予想以上」の追加利下げ慎重姿勢と日銀の「予想外」の追加利上げ慎重姿勢によってドルは買われ、円は売られるところとなりました。その結果12月のレンジは、「1ドル=148~158円」でした。
1月はFRBは利下げ見送り、日銀は利上げとなりましたが、トランプ大統領の就任直後の動きも無難に乗り越えて、12月のレンジ内で動いたことになります。特に1月15日の米国12月CPI(消費者物価指数)発表後は「1ドル=154~157円」に上値が切り下がっています。
今回のカナダ・メキシコに対する25%関税賦課や、その後の発動1カ月延長が報道されてもこのレンジは抜け切れませんでした。
関税発動の先送り決定により、トランプ大統領が関税をあくまで交渉の材料と考えていることが確認されました。そして「米国経済への痛みを伴うトランプ関税を、強引には進めないのではないか」との見方は、市場でも政権内でも強めるものとなるかもしれません。
トランプ大統領の政策は、「米関税引き上げ→米国の輸入物価上昇→FRBの利下げ時期後退および市場金利の上昇→ドル高」との見方が大勢でしたが、今回の25%発動によって、「米景気後退懸念および他国の景気後退も懸念→世界各国の株安」といった展開が現実に起こり、米国にとっても悪い状況が起こることが突きつけられた状況となりました。
これからはドル安の色合いが濃くなっていく可能性もあります。
2月4日、トランプ政権は中国からの輸入品に対する10%の追加関税を発動しました。おそらく発動前に中国と交渉していたと思われますが、カナダ・メキシコのように合意には至らなかったようです。
そして中国は同日、石炭やLNGなど米国からの輸入品に最大15%の追加関税を課すと発表しました。中国からの報復措置の発表は、米国からの発動発表の数分後でした。中国は相当準備していたことがうかがわれます。
4日の東京株式市場は、カナダ・メキシコへの発動延期を受けて、前日の1,000円超の下落を買い戻す動きでしたが、米中の関税を巡る応酬によって買戻しの勢いがそがれることになりました。
1ドル=153円台への円高が進行。これまでの円売りポジションの調整か?
そして5日の東京市場では、米国の関税政策は世界経済の不確実性を高める要因として懸念され、1ドル=153円台への円高が進んでいます。これまでの円売りポジションの調整が進んでいるのかもしれません。1月のレンジを円高に切り下げようとしているのか注目したいと思います。
日経新聞によると、ニューヨーク連邦準備銀行は昨年12月に、2018~2019年の米中関税や株式市場への影響を分析したレポートを公表したと報じています。そのレポートによると、米国の対中関税や中国の報復関税によって米国株が下がり、累計では11.5%下落したと試算しています。また、これを株式価値に換算すると、4.1兆ドル(約630兆円)を失ったとしています。
投資ファンド経験者であるベッセント財務長官は、関税発動による市場への影響を十分に理解していることが予想されるため、本格的に発動の影響が出る前に相手国と交渉し、迅速に解決を図ろうとする動きがこれからも起こりそうです。その間為替市場にとってはかく乱材料となり、今回のように円安や円高を繰り返すことが予想されるため注意が必要となります。
世界銀行は1月、米国が全ての輸入品に10%の関税を課した場合、2025年の世界の経済成長率は0.2%押し下げられると推計しました。他国が報復措置を打ち出すと、経済成長率はさらに下振れすると分析しています。トランプ大統領が強硬姿勢を貫けば、世界経済への打撃はより大きくなり、円高が一段と進むかもしれません。
円高要因は、トランプの関税政策だけではない
円高の要因は米国の関税政策による世界経済後退懸念だけではないようです。1月に日銀は0.25%の利上げを決定し、FRBは政策金利を据え置き、ECB(欧州中央銀行)は0.25%の利下げを決定しました(4回連続)。1月は日米欧の金融政策が日↑米→欧↓と、はっきりその方向性が示された月となりました。
その結果、1月はドル/円もユーロ/円も円高となり、特にユーロ/円やポンド/円などのクロス円の円高の値幅が大きくなりました。FRBは利下げに慎重姿勢ですが、トランプ政策によって景気に影響が及べば、利下げを急がない姿勢に変化が見られるかもしれません。
欧州では、直近の10-12月期GDP(国内総生産)でドイツやフランスがマイナス成長となっているため、追加関税の応酬によって経済が下押しされれば、利下げが続くことが予想されます。日銀も影響を受ける可能性がありますが、利上げペースが遅くなる程度かもしれません。
今後のドル/円の動向を見る時には、クロス円の動きにも注目する必要があります。6日には、BOE(英国中央銀行)の政策金利発表があります。0.25%の利下げとの見方が多いようですが、注目したいと思います。
トランプ大統領は1月31日、各国から輸入する鉄鋼や半導体なども関税の対象とする考えを示し、「おそらく2月18日ごろに実施されるだろう」と述べています。
この関税の対象には、日本も含まれる可能性があるため、2月7日の日米首脳会談の成果がますます注目されることになりそうです。また、対米貿易赤字国であるドル/円相場について何らかの言及があるのかどうかも注目です。
7日には米1月雇用統計も発表されます。4日に発表された12月JOLTS(雇用動態調査)求人件数は760万件と、予想を大きく下回りました。12月の非農業部門雇用者数は、ロサンゼルスの火事や米南部の寒波などによって前月より低下する予想となっていますが、どの程度低下するのか注目です。
また、トランプ大統領の移民強制送還と逮捕によって、不法移民だけでなく移民も外出しなくなっているとのことで、このことや年次改定による下方修正が雇用市場にどの程度影響するのかも注目したいと思います。
(ハッサク)
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