1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「トレーダー598人クビ」AIの計り知れない影響 人間にしかない「創造的発想力」とは何か

東洋経済オンライン / 2023年11月28日 15時0分

人間の仕事の一部をChatGPTなどのAIが肩代わりすることが一般的になっている(写真:Moor Studio/getty)

人間の仕事の一部をChatGPTなどのAIが肩代わりすることがすっかり一般的になった。さまざまな未来予測においても、この傾向はますます強まっていき、弁護士や薬剤師など、「安泰」とされていた職業ですらすでに、「人間よりAIのほうが信頼できる」と回答する人の方が多くなっている。かつてと同じように、人間が必要とされるには何が必要なのか。イ・ジソン氏著『仕事を奪われない8つの思考法 AI時代に「必要とされる人」になる』より紹介する。

トレーダー598人を解雇に追い込んだAI

ウォール・ストリートで起きた1つの事件がある。

2013年のことだ。ダニエル・ナドラーという青年が、Kensho Technologies (以下Kensho)という人工知能のスタートアップ企業を設立した。この会社は、ディープ・ラーニング技術を搭載したAI を実用化させるという目標を持っていた。つまり、人間よりも優秀なAI を作って人間に置き換えるというわけだ。

役員と社員を合わせて50人しかいないKenshoが、どうやってウォール・ストリートの“ 士官学校” と呼ばれ、心臓部である最大金融投資企業、ゴールドマン・サックスの目に留まったのかはよくわからない。ともかくゴールドマン・サックスは、ダニエル・ナドラーのKensho に全面的な投資を決めた。

それからしばらくして、Kensho のAI がゴールドマン・サックスのニューヨーク本社に導入されたのである。

Kensho のAI は、まるで中世ヨーロッパの修道僧が俗世との縁を切ってひたすら祈祷と黙想に専念するかのように、美しく、クリーンに、実直に仕事に打ち込んだ。その結果、KenshoのAIは当時ウォール・ストリートで最高給を得ていた600人のトレーダーが1カ月近くかけて処理していたことを、たった3時間20分で終えてしまった。しかも、彼らの何倍も効率よく仕事をこなし、会社に莫大な利益を与えた。

おかげで598人のトレーダーは仕事がなくなり、荷物をまとめて家に帰らされる羽目になった。では、残る2人はどうして解雇を免れたのだろうか? AI の業務を補佐する人員が必要だったからである。残った2人はAI の指示を受ける立場に降格したのだ。

AI が最も得意とするのは「知識」と「技術」を積むことである。人間はこの二領域でAI に追い付くことは絶対にできない。その前に人間固有の能力を身に付けなくてはならないのだ。

人間にしかない「能力」に注目せよ

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください