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意外な盲点「日本で今、家が足りない」問題の真相 空き家問題だけではない!問われる住宅政策

東洋経済オンライン / 2023年11月30日 12時0分

ファミリーだけでなく、単身世帯も家賃上昇は起こっている。最近世帯人員の減少が急ピッチで進んでおり、世帯数はこれまで以上のペースで増えている。1万人が流入して、世帯人員が2人なら、5000世帯の増加だが、世帯人員が1.8人なら5556世帯となり、556世帯増える。このように、人口はさほど増えなくても世帯人員が大きく減少すれば、世帯数はこれまで以上に増えることになる。

それが深刻な状況になっているのが、東京都区部である。世帯数の伸びはすでにコロナ前の水準まで戻り、来春は史上最高の流入が見込まれる。なぜなら、最も流入の多い23歳の新卒採用世代は大卒求人倍率に比例して増えるが、その大卒求人倍率はコロナ後で急上昇し、コロナ期間中に来られなかった溜まり需要も含めて、来年大量に流入してくるからだ。

それに加えて賃貸のストックは徐々に減っていく。毎年同じ戸数着工しているなら、築30年が建物の寿命ならストックの3.3%が、築50年なら2%がストックからなくなることになる。それだけのストックが必要なら、少なくとも30年前、50年前と同じ戸数の新規供給が必要なのだ。

こうして、新規需要は増え、ストックは減るからこそ、新規着工が一定量必要になるわけだ。その数が不充分ならば稼働率は上昇し、100%に接近していくことになる。空室という在庫が少ない状況では、需給逼迫で賃料は上昇する。今はその状況にある。

ならば、新規着工を増やせばいいじゃないかと思うかもしれないが、それがままならない環境でもある。それは建築費の高騰と工期の延長だ。人手不足倒産が最も多い建設業界では着工は増やしたくても簡単には増やせない状況にある。

良質なストック形成に寄与する政策が必要

このままいくと、数年後には賃貸住宅の稼働率が100%に接近する可能性がある。その際には、家賃がどのくらい上がるかは、過去に一度だけ実績がある。

それは、東日本大震災のときで、津波でストックの多くが失われ、家を失った需要が急増し、稼働率が100%になった。物件検索サイトには募集住戸がほぼなくなり、管理会社に直接問い合わせて待ち行列に並ばないと居住することすら難しい状況となった。この際、仙台市で上がった賃料幅は2割だった。同じことが起きたら、家賃水準の高い都心では2割では済まないだろう。

そこまで家賃が上がると、首都圏から引っ越す人が増えるかもしれないし、都会に出てくる人も減るかもしれない。住める家があるところに引っ越すニーズが顕在化し、築古ストックの建て替え延命が起きるかもしれない。

そのためにも良質なストックの形成に寄与する政策が必要と私は考えている。アパートであれば企画から半年、マンションであれば約2年経たないと竣工して人が住めるようにはならない。日本における「家不足問題」はすでに待ったなしの状況にあると思っている。

沖 有人:不動産コンサルタント

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