1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

城崎温泉、攻めの「全旅館一斉休業」知られざる凄さ まち全体で足並みをそろえてコロナ禍に対応

東洋経済オンライン / 2023年12月1日 19時0分

「まち全体で1軒の旅館」として共存共栄を目指してきた城崎温泉(写真:Graphs/PIXTA)

新型コロナウイルスが流行し始めた頃、いち早く全旅館の一斉休業に踏み切った温泉地がありました。兵庫県豊岡市の城崎温泉です。なぜ城崎温泉は、まち全体で足並みを揃えることができたのでしょうか。

その理由として、本来ならば各々が独占していたいはずのデータを地域で共有し、公共財として活用したことが挙げられます。ここに新たなデータ活用のヒントがあると、地域マーケティングの専門家である久保健治氏は語ります。

※本稿は久保健治氏の新著『ヒストリカル・ブランディング 脱コモディティ化の地域ブランド論』から一部抜粋・再構成したものです。

長い歴史を持つ城崎温泉

歴史文化は地域ブランドの核となりえるものだ。だが、歴史を核にした地域戦略は、時として歴史とは真逆にすら思える、最新技術による地域イノベーションを促進させる可能性まで持っているようだ。兵庫県豊岡市で、それを示唆する動きが起こっている。

兵庫県豊岡市は2005年に合併で誕生した。但馬地域に位置しており、兵庫県で最も面積が大きい市だ。

城崎温泉を有する城崎、但馬の小京都といわれる城下町の出石、コウノトリと共生する日本屈指のカバン生産地豊岡、北前船の寄港地でもあった海を有する竹野、複数のスキー場を持つ神鍋高原がある日高、農業地域としてふるさとの面影を感じる但東。それぞれの個性を持つ地域が合併して誕生した。

城崎温泉は志賀直哉の『城の崎にて』が有名だが、そのはるか前である奈良時代の717年に、道智上人という僧侶が難病の人々を救うために1000日間にもわたる修行を行い、720年に温泉が湧きだしたのが始まりとされる。2020年には開湯1300年となった長い歴史を持つ温泉地だ。

一時期は国内観光客の減少に苦しんでいたが、近年ではインバウンド観光に力を入れており、外国人宿泊者数が6年で約45倍を達成。国内向けにもさまざまな施策を実施するなど、先進的な取り組みで注目されている。実際に、豊岡市のDMOである豊岡観光イノベーション(TTI)は第13回観光庁長官表彰を受賞している。

私は数年前からTTIのアドバイザーとして国内外向けの観光振興に取り組んでいる。もちろん、差別化戦略としてヒストリカル・ブランディングにも取り組んでいるが、データストラテジー株式会社の研究員としても関与しているので、デジタルマーケティングの実装についても一緒に活動している。

そこでは、歴史とイノベーション技術の接点も始まっている。

豊岡市が選んだ「攻め」の一斉休業

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください