灘→東大→YouTuber「年収捨てた」彼らの波乱人生 なぜ2人はあえて「エリートコース」降りたのか
東洋経済オンライン / 2023年12月2日 10時30分
偏差値が高い環境こそが正義……その価値観のもとで勉強を続けていると、経歴や年収という多数の人から評価される基準に価値を感じるようになってもおかしくない。
しかし、彼らがそうならなかったのは、類稀なる能力に頼って楽をするのではなく、その能力や環境を生かしてさらに自身を極限の状況にまで追い込み、勝ち取ってきたものがあるからなのだろう。
絶対に合格しなければならない状況の中で受験に立ち向かい乗り切った田内氏と、自分の殻を破るために東京大学理科III類(医学部)に挑戦して合格した青松氏。
彼らの受験は他の受験生と比べても過酷な状況に立たされていたように思える。
それでも、筆者には、限られた環境の中で困難にどう立ち向かい、解決するかを考えて、立ち向かっていくという共通点に彼らの言う「おもろさ」があるのだろうと感じられた。
「灘高生は受験以外にも、何かで集中してのめり込んだら結果が出る人が多い」と彼らは語る。
それは、彼らが「問題を解くこと」に「おもろさ」を見つける特性があるからなのではないかと、今まで話を聞いてきた筆者は考える。
いま彼らのいるYouTubeも、再現性が低く、流行り廃りも激しい業界である。それでも彼らがこの世界にのめり込むのは「バズる」という最適解を導くために試行錯誤しているからだろう。入試問題と違って明確な答えがないからこそ、同質でもあり、異質でもある「おもろさ」を見出しているのではないか。
筆者は、このきびしいYouTubeの世界で数字という結果を出している彼らから、高年収の世界で生き続ける同級生とも共通するたくましい灘高出身者像を感じることができた。
自己満足を超えた「おもろさ」が原動力
しかし、より深く話を聞いていると、どうやら彼らの言う「おもろさ」は自分たちの満足だけではおさまらない、より深い意図があることがわかった。
その意図がわかると、2人の書籍が異例の売れ行きを記録している理由が見えてくる。
青松氏の短歌集『4』は、短歌集というジャンルながら紀伊國屋新宿店1店舗で1000部近い驚異的な売り上げを達成し、田内氏の小説『きみのお金は誰のため──ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』は、売り切れ続出で発売1カ月で8万部の発行にいたっている。
次回は、そんな彼らの「おもろい」のより深い意図を探っていく。
濱井 正吾:教育系ライター
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