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「学力差の要因は遺伝が50%」教育格差の解決策 無料塾は教育格差にどう立ち向かうべきか?<前編>

東洋経済オンライン / 2023年12月15日 17時0分

「親ガチャ」の根本原因といえる「教育格差」をなくすには、教育の成果のとらえ方を変える必要があると語る(写真:露木聡子)

学習支援ボランティアの様子を『ルポ 無料塾』として上梓した教育ジャーナリストのおおたとしまささんと、『教育は遺伝に勝てるか?』などの著書がある行動遺伝学者の安藤寿康さんが、教育格差の解決策について語り合う<前編>。

学力差の要因は遺伝が50%、家庭環境が30%

おおた:『ルポ 無料塾』を書き終えたとき、まっさきに安藤さんとお話ししたいと思いました。無料塾の現場を取材して得た気づきをヒントにして、自分たちがどんな社会を目指すべきなのかをさらに考えるにあたって、行動遺伝学の知見が欠かせないと思ったからです。本では十分に深められなかったところを、今日は伺っていきたいと思います。

【図表で見る】行動遺伝学から見る「子どもの学力に対する影響力」遺伝・家庭環境それぞれ何%?

安藤:いくつかのご著書を拝見しました。教育現象について、私たちはかなり同じことを感じたり考えたりしているのではないかと思います。僕は現場を知りませんから抽象的に考えていたところに、おおたさんの具体的な言葉が乗ってきたという感じがして、すごく感銘を受けました。立場は違うのに、同じような結論といいますか、見方に達している。

おおた:一応おさらいをしておきますと、無料塾というのは、何らかの理由で一般的な塾に通えない子どもたちに対して勉強を教えるボランティア活動です。子ども食堂の勉強版だととらえればイメージしやすいと思います。

安藤:自分でもやろうかと思うくらい、もともと興味がありました。支援もしています。

おおた:いわゆる「教育格差」を少しでもなくしていくための素晴らしい活動に共感する一方で、いろんな矛盾にも気づいちゃうわけです。塾に通えない子どもが競争の土俵にも上がれない社会って設計としてどうなのよ、とか、そもそもなんで教育で競争しなくちゃいけないんだっけ、とか。

安藤:その視点が素晴らしいなと思いました。

「生まれ」の影響を打ち消せば、教育格差はなくなるか

おおた:親の社会経済的地位(SES)や出身地、性別などの「生まれ」によって、学力や最終学歴に差がつく傾向のことを教育格差といいます。結果的に学力差がつくことが問題なのではなくて、本人にはいかんともしがたい「生まれ」と学力・学歴が相関していることがフェアではないという問題提起が、主に教育社会学の分野からされてきました。

いわゆる「親ガチャ」ですね。そこでいきなりですが、核心に迫る質問をしたいと思います。教育社会学的な意味でいう「生まれ」の影響を打ち消せれば、教育格差はなくなるのでしょうか。

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