訪日外国人が満喫!一味違う「日本の地方旅行」 ガストロノミーでどう訪日客を引きつけるか
東洋経済オンライン / 2023年12月16日 11時0分
今回は2泊3日の行程を通して、特別な設定や演出(致道博物館の御隠殿での夕食と庭園ライトアップ、湯田川温泉神楽の実演鑑賞、善寳寺での雛菓子体験など)が随所に組み込まれた。ツアー行程に沿って、毎食ごとにその日に訪れた鶴岡の歴史と文化が料理から語られ、旅そのものが食を通したストーリーになっていた。
ガストロノミーを掲げる料理で象徴的だったのは、出羽三山神社の羽黒山参籠所「斎館」での精進料理だ。斎館は、現在も修験者や信者が精進潔斎する場所である。羽黒山伏伝承の精進料理について伊藤新吉料理長から説明があった後、羽黒山の天然の山菜やキノコを使い、乾燥や塩漬け、燻製などいくつもの製法によって異なる味付けにした、色彩も味わいも豊かな膳が出された。
また、明治初期に旧庄内藩士によって開墾され、全国有数のシルクと果物類の生産地となった松ケ岡のワイナリー、ピノ・コッリーナは、地産シルクと庄内米の米粉を混ぜ込んだフォカッチャ(パン)が名物の1つ。ツアーに参加した発酵料理に詳しい料理家の井澤由美子さんも「シルクをジュレにして生地に練り込んだパンは非常に珍しい」と話した。
今回のツアーのメインは、鶴岡の歴史と縁深い旧庄内藩当主の後嗣・酒井忠順氏がホストとなった、酒井家ゆかりの致道博物館の御隠殿でのモニターとの夕食会だ。国の名勝に指定された庭園のライトアップを眺めながら、酒井氏本人から庄内の酒井家の歴史と食文化のつながりを聞き、鶴岡の食材によるフルコースのプレミアムディナーを楽しんだ。
外国人参加者に話を聞くと、歴史建造物の説明が専門的で難しかったというアメリカ人男性の声があった一方、ツアー全体を通して、ほとんどのモニターが、この地のバックグラウンドを生産者や料理人など当事者から直接聞くことでシンパシーを感じ、食文化を理解して料理を味わうことを存分に楽しんでいる様子だった。
今回の取り組みに関して、日本におけるヴィーガン・プラントベース料理の第一人者であり、社会貢献活動として「ソーシャル・フード・ガストロノミー」を提唱する杉浦仁志シェフは「鶴岡市には独自性のある食と結びついた歴史文化があり、世界に勝てる地の食文化が根づいている。従来の発想と視点を変えて、外国人に向けた発信をどう切り開いていくかが次のフェーズだ」と話した。
外国人を呼び込むための課題も
外国人を引きつける食文化がある一方で、課題もある。それは、料理人や生産者、宿泊施設、観光事業者など関係者それぞれの立場ごとにガストロノミーへの意識や視点が異なることだ。
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