1人の天才が「Amazon」を思いついた思考の裏側 ビジネスやイノベーションの「発端」は意外と凡庸
東洋経済オンライン / 2023年12月19日 16時30分
「1人の天才が1つのアイデアで一夜にして世界を変える」というビジネスの成功の物語は、多くの人の心を躍らせます。しかし、イノベーション、選択、リーダーシップ、創造性研究の第一人者であるコロンビア大学ビジネススクール教授のシーナ・アイエンガー氏は、「イノベーションの発端は凡庸」だといいます。「Amazon」の華々しい登場の裏側の物語から解説します。
※本稿は『THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法:コロンビア大学ビジネススクール特別講義』から一部抜粋・再構成したものです。
ビジネスの成功、とくに大成功の物語は、ありふれたおとぎ話のように語られることが多い。ある朝起業家が目を覚ますと、業界に革命を起こすすばらしいアイデアが頭に浮かんだ。血のにじむような努力をして実現をめざし、とうとうやり遂げた、と。
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そうした成功物語が現実とかけ離れていることがわかっていても、おとぎ話は語られ続ける。「1人の天才が1つのアイデアで一夜にして世界を変える」という物語には、ロマンがあるからだ。
実際には、どんなにすばらしいイノベーションであっても、その生まれ方はずっと凡庸だ。
成功するイノベーションを生み出す構造は、目を見張るようなものではない。重要なのは、課題を選び、それを理解するためのプロセスだ。そのことを忘れないでほしい。
ジェフ・ベゾスはいかにアマゾンを思いついたか
もっとよい物語を紹介しよう。
1994年、ジェフ・ベゾスはヘッジファンドでアナリストをしていた。大学でコンピュータ科学を学び、テクノロジーに関心のあったベゾスは、インターネットと呼ばれる、新しい急成長中のネットワークにビジネスの可能性をかぎ取った。彼が最初に考えた課題は、「インターネットを通じてお金を稼ぐには?」である。
数カ月かけていろいろなアイデアを出し、それぞれの実現可能性を検証した。1つめのアイデアは、広告を収益源とする無料の電子メールサービスだった。次に、インターネットで株式を売買できるサービスを検討した。
だが、どちらのアイデアにも、リスクを取って起業するほどの確信が持てなかった。
最終的に、とくに頭に残ったものが1つあった。インターネットを通じて消費者に直接商品を販売する、というアイデアだ。
彼が考えた重要なサブ課題
これを実現するためには、インターネット上に中心的な市場を築き、多様な企業と消費者をつなぐ仲介者になる方法を考える必要がある。
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