報酬を払うとアウト?意外と知らない「ステマの罠」 「トラブル」を回避する法律知識と正しい対応
東洋経済オンライン / 2023年12月19日 9時30分
ソーシャルメディアを活用して商品やサービスの宣伝を行う手法は、低コストでできる手軽なプロモーションとして、いまや多くの企業が採用している。しかし、そこにはステルス・マーケティングなどの落とし穴も存在する。
近著『デジタル時代の 情報発信のリスクと対策』を上梓し、企業の危機管理に詳しい北田明子氏が、前回に続き、いまビジネス現場で頻発している、ソーシャルメディア活用で法律違反となる事例とトラブル回避の対応について解説する。
典型的なステマの事例
ある自治体が、自転車での観光推進のため大掛かりなプロモーションを実施しました。自治体下にある協議会が、観光PRのために人気インフルエンサーに協力を仰ぎ、自転車でツーリングする動画を撮影しユーチューブに投稿しました。
この時、インフルエンサーには経費などを含めて謝礼を支払っていたのですが、投稿の際にはPRであることは明記せずに配信を続けました。すると、3カ月後、ある新聞に「口コミを装って宣伝するステマではないか?」という記事が出たのです。
自治体側は「自治体の関与が容易に判断できるため、ステマには該当しないと認識している」とコメントを出しましたが、同協議会は県の補助金を使って、インフルエンサーに対する出演料など、数十万円を広告代理店に支払っていました。
この件は、何が問題なのでしょうか。また、自治体の判断・対応は正しかったのでしょうか。
弁護士の見解は「景品表示法に違反する可能性がある」というものです。
発信力のある「インフルエンサー」を活用するインフルエンサー・マーケティングは、すっかり定着しました。事業者から直接配信する「広告」に比べて、消費者の共感を得られやすい効果があるとも言われます。
「口コミを装って宣伝するステマ」に該当
インフルエンサー・マーケティングは、企業がCMに有名人を起用するのと変わりはありませんから、インフルエンサーに広告を依頼すること、報酬を支払うことは、何ら問題はありません。
しかし、それを「広告である」と明示しない場合は、ステルス・マーケティング、つまり、それが宣伝広告であると消費者に気づかれないように行う宣伝活動とみなされます。いわゆる「サクラ」や「やらせ」と呼ばれていた宣伝活動です。
上記の自治体の例は、人気インフルエンサーに出演料を支払って動画に出てもらっているため、実態は広告です。しかも、その旨を明示していませんから、新聞記事にあるよう「口コミを装って宣伝するステマ」とみなされても仕方ありません。
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