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ミスミG、AI部品調達の「革命児」が教育現場で活躍 大学・高専の3割使用、AIが部品設計の「先生」に

東洋経済オンライン / 2023年12月20日 9時30分

メビーにアップロードされた近畿大学の鶴崎桐梧さんの設計データ(記者撮影)

FA(ファクトリーオートメーション)向け機械部品の大手ミスミグループ本社(ミスミG)が近年、とくに注力している事業がある。

【写真】メビー製の部品を用いて実際に作られた近畿大の教材

AIを用いた部品のオンライン発注プラットフォーム、「meviy(メビー)」だ。顧客が3Dの設計データをウェブサイト上にアップロードすると、わずか数秒で見積もりと納期を提示。最短で翌日に出荷することもできる。

調達に掛かる時間を大幅に短縮する「革命児」として、工場などの製造現場に浸透しつつある。B to B(企業間取引)で順調に業績を拡大していく一方、「想定とは違う使われ方も広がっている」(ミスミG社員)という。工学部などの理系教育で、学生が設計技術を習得するために用いたり、注文した部品を製作に役立てたりしているのだ。

ミスミGの調べでは、全国の大学と高等専門学校のうち約3割がメビーを使用。同社は今年から学校向けの支援プログラムも始めた。人手不足や若者離れが叫ばれる製造業界。未来のものづくりを支えるため、最先端のAIサービスを取り入れる教育現場を取材した。

AIが部品設計の「先生役」に

「トライ&エラーをすごく短いスパンで繰り返せる。メビーで試行錯誤を重ねている間に、工作機械が素材を部品へ加工していく様子を、頭の中でイメージしながら設計できるようになった」

そう語るのは、近畿大学理工学部3年で機械工学を専攻する鶴崎桐梧さん(20)。

所属する研究室で10月、指導教員に勧められてメビーを活用し、射出形成機で使う金型の設計に取り組んだ。国内のあるFA企業との共同研究で、EV(電気自動車)向けバッテリーケースのフタ部分を新素材で作るプロジェクトの一環だった。

メビーに設計データをアップロードすると、物理的に加工できないミスがあった場合、どこに問題があるのかをAIが瞬時に指摘してくれる。

例えば、図面上ではうまく描けているように見えても、実際は穴と穴の距離が近すぎたり、曲げられない箇所を曲げようとしていたりするケースがある。こうした細やかなルールは従来、現場で覚えるものとされてきた。加工業者へ見積もり依頼を出し、「これでは作れない」と突き返され、データを修正してまた送る。その繰り返しで感覚的に体得していたのだ。

メビーはこの過程を丸ごと引き受ける。結果的に「設計の先生」となれることが、教育現場で注目を集めている最大の理由だ。部品を発注せず、見積もりにとどめておけば、すべての機能を無料で利用できることも大きい。ミスミGは教育機関向けのプロモーションは実施していなかったが、口コミで全国の大学や高専へ広まっていった。

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