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OpenAI騒動が示す「人類がAIと戦っている」現実 効果的利他主義者が去った後、何が起こるのか

東洋経済オンライン / 2023年12月21日 12時10分

ただし、騒ぎで報道されたように、理事会メンバーらはアルトマンが進める加速度的な開発に懸念を抱いており、ChatGPTの公開も安全性を顧みない早まったものだと進言していたにもかかわらず、最終的には振り切られたことになる。

そもそもアルトマンは、Yコンビネーターというシリコンバレーでよく知られるスタートアップ育成、投資会社のトップを長年務めていた人物だ。いかに短時間にバカ売れする製品を作るかに注力してきたわけで、NPO的な価値観との間にはどうしても溝がある。開発が進むにつれ、社内での分断はますます深くなっていったようで、そのために同社を去る社員も少なくなかった。

さて、4人のボードメンバーのうち創設当時の価値を頑なに守ってアルトマンの解雇を決めた3人のメンバーは、ともに「効果的利他主義(effective altruism)」という信条や、それに基づいて活動する組織とつながりを持っていた。

効果的利他主義とは、「どうすれば最大限他者のためになるかを、エビデンスと論理を基に考える」という社会運動で、2000年代初頭に始まり社会貢献や寄付の行動へつなげられてきた。

中でもAIが火急の課題とされ、AI研究者や開発者の中には、効果的利他主義を安全なAI開発の基礎と捉える人々も多い。OpenAIの創設をバックアップしたマスクやティールも、少なくとも当初はその信奉者だった。

しかし、OpenAIの理事会メンバーのそうした信条は、営利目的の組織に集まってきた800人規模の社員の中では化石のようなものだった。アルトマンが解雇後に一時マイクロソフトへ移籍するとされた際、社員のうち700人が追従すると報じられたが、それはアルトマンへの支持や理事会メンバーに対する反抗というより、OpenAIが当初とは全く異なった組織になってしまっていたことの証左と言える。

「効果的加速主義」が牛耳り始めた?

アルトマンが返り咲き、上述3人の理事会メンバーが交替した今、OpenAIは何に沿ってAI開発を進めるのか。OpenAIのホームページには、依然として「全人類のために」云々の文言が見られるが、その具体的な方法は不明だ。

外部からは、効果的利他主義者が一掃され、代わって「効果的加速主義」が牛耳り始めたのではないかとも見られている。

効果的加速主義とは、テクノロジーの開発は足枷をはめることなく推進されるべきで、そうしてこそ結果的に複雑なシステムが出来上がると信じるものだ。AIについて言えば、安全性への懸念や規制は不要で、行けるところまで突っ走れというアプローチと受け取られる。究極的には、人類がAIにとって代わられても構わないという危険思想だと見る専門家もいる。

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