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EUがどんなに張り切ってもAI規制の「無理筋」 AI規制はテクノロジーの進化に追いつけない

東洋経済オンライン / 2023年12月22日 7時40分

AIをめぐる規制は各国でばらつきがある(イラスト:Hokyoung Kim/The New York Times)

2021年4月、人工知能(AI)を規制するために作成された125ページに及ぶ法律案を提出したヨーロッパ連合(EU)の首脳たちは、それがAI規制の世界的モデルになると自賛した。

ヨーロッパ議会の議員たちは、他国ではAIが議題にすら上らなかった頃から、3年にわたって何千人という専門家の見解を聴取。その結果、「将来も時代遅れになることのない」「画期的な」政策が生まれたと、27カ国から成るEUでデジタル政策を統括するマルグレーテ・ベステアー氏は断言した。

その後、ChatGPTが登場した。

ChatGPTに出し抜かれた規制案

プロンプトに対して独自の回答を生成することで昨年話題をさらった、この不気味なほど人間的なチャットボットは、EUの政策立案者たちに不意打ちを食らわせた。

EUの法案ではChatGPTを動作させている種類のAIに対する言及がなく、政策議論の主要な焦点とはなっていなかった。議員やその補佐官たちは、このギャップに対処するため盛んに電話やメールで連絡を取り合った。その一方で、テック企業の幹部たちは、過度に厳しい規制はヨーロッパを経済的に不利な立場に追いやる可能性があると警告した。

EUの議員たちは今なお、何をすべきかをめぐって議論を続けており、AI規制法案は危機に瀕している。「私たちはこれからも、つねにテクノロジーのスピードに後れをとり続けるだろう」と、AI法案の作成に携わったヨーロッパ議会のスヴェーニャ・ハーン議員は言う。

EU、アメリカ、その他の国々の議員や規制当局は、AIを規制する戦いに敗れつつある。この強力なテクノロジーが仕事を自動化して人々から雇用を奪い、偽情報の拡散を加速させ、最終的には独自の知性のようなものを発展させるのではないかという懸念が高まるなか、各地の規制当局は大急ぎで後れを取り戻そうとしている。

各国はAIの潜在的な危険性に対処するべく迅速に動いてきたが、ヨーロッパ当局はテクノロジーの進化に不意を突かれることとなった。アメリカの議員たちは、AIの仕組みをほとんど理解していないことを大っぴらに認めている。

各国の対応はバラバラなものとなっている

その結果がまとまりのない対応だ。ジョー・バイデン大統領は10月、AIが国家安全保障にもたらす影響に関する大統領令を発出、議員たちは対策があるとすれば、どのような法案を成立させるべきか議論している。

日本はAIについて法的拘束力のないガイドラインを策定中だが、中国は特定のAIに制限を課した。イギリスは、既存の法律で十分にこのテクノロジーを規制できるというスタンス。サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)は、AI研究に国費を注ぎ込んでいる。

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