事例解説「安心な職場環境」怠った企業の"その後" 法規制違反・訴訟リスクに直面する可能性も
東洋経済オンライン / 2023年12月29日 17時0分
企業の不祥事や問題、トラブルが報じられるニュースは枚挙に暇がありません。たとえばセキュリティ対策や人権・労働問題、商品の品質やマーケティングなど、その種類は様々です。しかし、これらのニュースを「ESG」の文脈から見ている人は少ないのではないでしょうか。
『あわせて学ぶESG×リスクマネジメント』の著者で公認会計士の木村研悟氏曰く、「環境:Environment、社会(人権):Social、ガバナンス:Governanceの頭文字をとったESGの本質は、『その企業のリスクマネジメント』にある」と話します。
そこで、この記事では企業のリスクマネジメントの考え方を「実際のトラブル」を例に挙げながら解説します。
現代社会において、人権尊重や働く人の安全・安心な職場環境整備は、企業の社会的責任として強く求められています。
企業がこれらの要素を適切に管理しない場合、レピュテーションリスク、法規制違反リスク、訴訟リスクなど、多岐にわたるリスクに直面する可能性があります。逆に、人権や労働権の尊重をビジネスの一部として組み込むことは、社会的信認を向上させ、従業員のロイヤリティを高めることができます。
悪化の一途を辿る世界的な人権・労働問題
人権問題の現状から解説します。
2023年3月のCIVICUS Monitorの調査によると、国家やテロによる弾圧を受けている国は117カ国あり、2017年の111カ国から増えています。2021年の人口比率で見ると、約7割の人々が「抑圧された環境」にいることになり、世界で見ると日本や欧米を除き、人権問題はまだまだ解決されていないことがよくわかります。
続いて、労働問題の現状に目を向けると、ILO(国際労働機関)の調査結果によれば、世界中で約2500万人が強制労働を受けており、うち約430万人が子どもとされています。地域では東アジアと東南アジアが最も多く、1655万人を占めます。セクターでは家事が最も多く、次いで建設、製造、農業と続きます(出所:International Labour Organization, Forced Labour: Global Overview)。
強制労働の現状を見ると、1日当たり2760万人が強制労働を課せられており、この数字は全世界で1000人当たり3.5人が強制的に働かされていることを意味します。女性と少女が全体のうち1180万人を占め、子どもは330万人を超えています。
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