NY生まれ「DASSAI BLUE」は米国で成功できるか 85億円の投資。「現地の評価や専門家の声」は?
東洋経済オンライン / 2024年1月2日 12時0分
旭酒造初となる海外での醸造は、さまざまな苦難があったと旭酒造・桜井博志会長は語る。
日本とまったく同じ醸造設備を作り、桜井会長をはじめベテランの職員たちで醸すも、なかなか納得のいく酒が作れない。
2023年5月から醸したSAKEも、第1号タンクから第7号タンクまではすべて不合格。第8号タンクでようやく合格点を出せるものに仕上がった。
苦戦した理由は、水や気候などの環境の大きな違いもあるが、新しいSAKE造りへの挑戦もあった。
現地で醸すのは、アルコール度数の低いSAKE
「DASSAI BLUE」の大きな特徴は、そのアルコール度数にある。
通常、日本酒のアルコール度数は15〜16度であるが、「DASSAI BLUE」のアルコール度数は14度。同社の「獺祭」は16度なので、2度も低い。
食中酒として、アルコール度数・12度前後のワインが浸透しているアメリカでは、従来の日本酒のアルコール度数は合わせづらいと考え、14度に仕上がるよう醸造を工夫したのだ。
一口飲んでみると、非常に軽やかな口当たりに驚く。
旨みも感じるが、華やかでエレガントな香りが印象に残る。まさにワイングラスで飲むのがふさわしい新しいSAKEだ。
販売されるのはニューヨーク州のみ。販売開始から3カ月経った今、評判も良く、おおむね予想どおりの売れ行きだそうだ。
そもそもニューヨークでの醸造所開業は、旭酒造が自ら探しに行ったのではなく、CIAからのオファーがきっかけだった。
当初は、大学のカリキュラムの一環で日本酒醸造を学ぶために、敷地内に醸造所を作ってほしいという相談だった。
それを聞き、日本酒を正しく知ってもらえる教育機関とともに醸造所を作ることは、「世界に日本酒の文化を広める」という使命をかなえるチャンスだと感じたという。
ただ、敷地内に小さな醸造所を作ってもビジネスにはならない。そこで、近くに醸造所を作ることを逆提案したのだという。
「以前から海外に醸造所を作りたいとは思っていました。世界に日本酒を飲んでもらう文化を醸成するには必要だと思ったからです」とは、桜井会長。
「私が旭酒造の経営を継いでから、地元ではなく大都市である東京での販売を見据え、最高品質の日本酒『獺祭』を造りました。それが売れて、転機となりました。最高品質の酒を武器に、大きな市場に挑戦する。そうすれば結果はついてくるという確信のもと、いずれは世界に進出したいと考えていました。それは日本酒という文化を世界に広めるという使命もありましたし、同時にビジネスとしての魅力もありました」と振り返る。
初期投資は85億円に膨らんだが…
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