鳥取、赤字ローカル線にも「成長余地」はあるのか 地方都市で鉄道が果たす役目はまだまだ大きい
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 6時30分
鳥取駅北口には飲食店やバスターミナルのほか、地方都市からの撤退が続く百貨店も健在。南口は新たに開発されたところで、かつては県庁同様、駅の北東2kmほどの鳥取城址近くにあった市役所が2019年に移転し、都道府県で最後の出店として話題になったスターバックスコーヒーもある。
鳥取市も郊外型ショッピングセンターの出店はあり、駅の北西側約5kmのエリアには、イオンモールなどが出店しているものの、2017年には「多極ネットワーク型コンパクトシティ」を掲げている。たしかに駅前の整備からはその方針が伝わってくる。
しかしながら中心市街地の活性化のためには、鳥取駅周辺に人を集める公共交通ネットワークの形成が重要になるはずだ。鉄道については、スピード、アクセス、サービスの3点が大切だと思っている。高速化については、鳥取駅の西側と南側については済んでいるので、あとの2点について要望しておきたい。
新駅設置の価値はある
アクセスでは新駅の検討を提案する。鳥取駅の西隣の湖山駅の次に鳥取大学前駅が1995年に開設されているが、因美線沿線にもポテンシャルを持つ場所がある。鳥取駅の南南東6kmほどのところにある若葉台という地区だ。
ここには1989年にまちびらきした「鳥取新都市」というニュータウンが広がっており、国土交通省の都市景観大賞「都市景観100選」に選定されている。街並みは上質で、商店のほか企業や大学もあるなど充実している。
ところが若葉台の脇を因美線が走っているのに駅はない。以前設置の動きがあったものの立ち消えになったというが、現在は路線バスと大学のスクールバスが合わせて1日約30往復走っているので、新駅設置の価値はあるはずだ。
鉄道が果たす役目は大きい
JR西日本では、高山本線の婦中鵜坂駅が、やはり周辺に住宅地が広がっており企業もあることから、富山市が新駅設置と増発の社会実験を行い、利用者が増えたことから駅が常設になったという実例がある。
サービスではハード・ソフト両面での快適装備に気を配ってもらいたい。JRの在来線は高速バスと時間や運賃で競合している地域がいくつかあるが、バスは座席のリクライニングが可能でWi-Fiがついているなど、この面で上を行くことが多い。
鳥取市周辺の高速道路や自動車専用道路はすべて片側1車線の対面通行なので、速達性では鉄道が有利だが、今後道路整備が進むことも考えられるので、快適装備は大事だと考えている。
少し前まで赤字ローカル線の代替手段だったバスは、いまや運転士不足で対応が難しいし、運転免許を返納した高齢者にとって大切な着座定員において、鉄道はバスを大きく上回る。社会において鉄道が果たす役目はまだまだ大きい。だからこそ今あるレールを有効活用してほしいと思っている。
森口 将之:モビリティジャーナリスト
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