「熱帯の人は楽に生きられるから貧しい」の大誤解 貧しい国の労働時間は富裕国よりも長い現実
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 9時0分
それは冗談としても、熱帯に多くある貧しい国々の人たちには労働倫理がないというのは、まったくの作り話だ。実際、貧しい国の人たちは富裕国の人々よりよっぽど働いている。
まず、労働年齢人口を比べてみても、貧しい国のほうがはるかに多い。世界銀行のデータによれば、2019年の各国の労働参加率は、タンザニアが87%、ベトナムが77%、ジャマイカが67%であるのに対し、ワーカホリックの国と考えられているドイツは60%、米国は61%、韓国は63%だった。
貧しい国では、学校へ行かずに働いている児童の割合もきわめて高い。
UNICEF(国際連合児童基金)の調査によると、2010~18年の期間、後発開発途上国(LDC)では5歳から17歳までの子どもの平均29%が働いていたと推測されるという(この数字には家事や、幼い弟や妹の世話や、新聞配達などの「お手伝い」をしている子どもの数は含まれていない)。
エチオピアでは子どもの半数近く(49%)が働き、ブルキナファソ、ベナン、チャド、カメルーン、シエラレオネでは児童労働率(児童労働者の割合)が40%にのぼった。
そのうえ、富裕国では、18~24歳(人生でいちばん体力がある時期だ)の若者の大多数が高等教育(専門学校、大学、大学院など)を受けている。高等教育を受けている若者の割合は、一部の富裕国では90%にも達する(米国、韓国、フィンランドなど)。一方、貧しいおよそ40の国々ではその数字は10%にも満たない。
これはつまり、富裕国では、若者が成人してからもしばらくは働かず、その多くが経済的な生産性の向上に直接は役立たない勉強をしているということだ。ただし、これにはほかの面では、例えば、文学や、哲学や、人類学や、歴史などの面ではとても大きな意義があると、わたしは思っている。
貧しい国では、富裕国に比べ、定年の年齢(国によって違うが、60歳から67歳)まで生きられる人の割合は低い。しかし元気であれば、富裕国の人よりもはるかに高齢まで働き続けることが多い。退職できるだけの経済的な余裕がない人が多いからだ。かなりの割合の人が肉体的に働けなくなるまで、自営の農家や商店主として、あるいは無報酬の家事や介護の担い手として、働き続けている。
さらに、貧しい国では富裕国に比べ、労働時間もはるかに長い。カンボジア、バングラデシュ、南アフリカ、インドネシアといった貧しく、暑い国の人々の労働時間は、ドイツ人、デンマーク人、フランス人と比べて60~80%、米国人や日本人と比べても25~40%長い(かつては「働き蟻」といわれた日本人だが、最近は米国人より労働時間は短い)。
生産性の低さはどこから来るのか
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