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2024年の金価格は何回も最高値を更新しそうだ ただし年の前半には「2つの急落リスク」に注意

東洋経済オンライン / 2024年1月4日 14時0分

こうした地政学リスクの高まりは、安全資産としての金に対する需要を大きく高めることになる。この先世界的な景気の減速が一段と深刻になり、株価がそれを織り込む形で調整局面に入ってくれば、それも安全資産の需要につながる可能性が高い。こうした先行きに対する漠然とした不透明感がある状況は、金にとっていちばん強気に作用すると考えてよいのではないか。

なお、金価格がドルベースで上がっても、円高になったときには金価格が円ベースでは下がってしまうのではないか、という見方もあるだろう。確かにそう見えるのだが、その際には双方の値動きの激しさを考えてみればよい。

過去の値動きに基づいた、ヒストリカル・ボラティリティーという指標を見ると、ドル円相場が押しなべて5~10%の間にとどまっているのに対し、金は10%を大きく上回る水準で推移している場合がほとんどだ。

つまり、ドル安を背景に金相場が動いたときでも、金の上昇率の方がドル円相場の下落率を上回り、円建てでの金価格も上昇する可能性は高いと思われる。

2024年前半には「2つのリスク」に注意

このように、金を取り巻く環境は「強気一色」と言えるのだが、だからと言ってリスクがまったくないというわけでもない。

特に2024年前半に気をつけるべきリスクとしては、次の2つを挙げることができよう。1つ目は、現在の金利市場が、FRBによる早期利下げの可能性をやや過剰に織り込んでいる点だ。市場は2024年3月19~20日のFOMCでの利下げ開始をほぼ織り込んでいる状況にあるが、これはさすがに行きすぎと言わざるをえない。

2023年10月以降の金利低下や株価上昇に伴う消費や景気の押し上げ効果や、さらには地政学リスクの高まりによる物流コストや商品価格反発の影響を考えれば、インフレがしばらく高止まりする可能性も十分に高いからだ。「3月の利下げ開始はやはり時期尚早」という見方が強まれば、金利は再び上昇に転じ、金にも価格調整圧力が強まることになる。

もう1つは景気の落ち込みが想定以上に強いものとなり、いわゆるハードランディングに対する懸念が高まる中、株式市場がパニック的な急落を見せるシナリオである。

株価の急落は基本的に安全資産としての需要を高めるという点で金の押し上げ要因となるが、投資家のリスク回避の動きが過度に強まることがあれば、話は別だ。金が安全資産ではなく、価格が変動するリスク資産の1つとらええられるようになる可能性には十分な注意が必要だ。「キャッシュしか信頼できるものはない」と、金市場からも資金が流出するほどに状況が悪化するなら、大きく値を崩すことも十分にありうる。

しかしながら、こうした一連のイベントがもしあっても、それをすべて消化し、FRBが実際に利下げに転じた後は、かなりの長期間にわたって上昇基調が維持される可能性が高そうだ。2000年初めのハイテクバブル崩壊時や、2008年のリーマンショックの際も、危機を脱した後には他の市場に先駆けて金価格が上昇に転じていることを、しっかりと頭に入れておきたい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅:NY在住コモディティトレーダー

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