国内の結核患者「外国出生者の割合増」が示す意味 2021年に「低蔓延国」になった日本、新規は1万人
東洋経済オンライン / 2024年1月6日 9時0分
2022年、世界で最も死亡者数の多かった感染症――といえば新型コロナだが、それ以前は結核であったことはご存じだろうか?
アジアやアフリカの低〜中所得国を中心に、今なお猛威を振るう結核。患者の咳やくしゃみによる飛沫から水分が蒸発した飛沫核を吸い込むことで、ヒトからヒトへ伝播する(空気感染する)感染症だ。
新型コロナが2類相当から5類に移行したのに対し、結核はSARSやジフテリアと同じ2類に属する。国としては、結核をいかにリスクの高い感染症だと捉えていることがうかがえる。
2021年に「低蔓延国」になった日本
欧米の先進国が早くからWHO(世界保健機関)の定義する低蔓延国(罹患率人口10万人に対して10人以下)になったのに対し、日本では2021年に初めて低蔓延国入りを果たしたばかり。
長年の対策が実った結果だが、手放しで喜べる状況とは決していえない。
「グローバリゼーションの時代には、人やモノの往来によって海外で広がっている感染症が、いつ日本に来てもおかしくない」と話すのは、22年から公益財団法人結核予防会理事長を務める尾身茂医師だ。
その上で、「世界が結核をある程度制圧しないことには、日本でも常に感染拡大のリスクがあると思ってほしい。日本では“結核は既になくなった病気”という認識を改める必要がある」と指摘する。
実際、結核の感染対策が功を奏したニューヨークでも、その対策を緩めた後、再び感染者が増加した。
外国出生者の患者の割合が増加
日本は低蔓延国になったとはいえ、2022年に登録された新規の結核患者は1万人を超える。とりわけ、近年注目されるのが、外国出生者の患者の割合が増えている点だ。
インバウンドがもたらす恩恵を考えるまでもなく、グローバリゼーションの波は否応にも押し寄せる。大切なのはいかに人の流れを止めるかではなく、ともに乗り越えるかの視点だろう。
「結核は、どこでも誰でもかかる可能性がある病気」だからこそ、結核予防会含め、日本が取り組んでいることがある。
その1つが、外国出生者が母国を出国する前に行うスクリーニング検査だ。検査で結核にかかっていないかを調べ、仮に見つかったなら、治療をしてから来日してもらう。
ただ結核は、後述するが感染から発症までの潜伏期間が長い。国を出るときは発病してなくても、日本に来て発病することは十分に考えられる。
その際には、「すぐに帰国してくださいだなんて言わないで、日本でしっかりと必要な治療を提供する。治療や予防に実績のある日本だからこそ、世界の中で果たせる役割がある」と尾身医師。
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