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国内の結核患者「外国出生者の割合増」が示す意味 2021年に「低蔓延国」になった日本、新規は1万人

東洋経済オンライン / 2024年1月6日 9時0分

結核の怖さは尾身医師の言葉を借りるなら、「人に警戒心を与えない」だろう。そこが、感染すればもれなく発症して死に至るエボラ出血熱のような感染症と異なる。

結核に感染した人が実際に発症するのは、全体の30%程度だ。そのうち10%は感染してから半年〜2年以内に発症するグループで、若者もしくは一度も感染していない人が主。20%は数年〜数十年経って免疫力が落ちてきたところで菌の力が勝って発病するグループで、高齢者に多い。

結核のもう1つの怖さは、症状がわかりづらいことにある。

結核の症状は軽い咳や痰で、2週間以上続く。高齢者は免疫の反応が弱いためこうした症状は出ず、何となくだるい感じが長く続くこともある。

薬が効きにくい、やっかいな菌

結核の怖さの3つめは、薬が効きにくいという点だ。結核菌は酸に強い抗酸菌に属するため、細菌の壁が厚い。おまけに結核はしたたかで、1つの薬では耐性(薬に対する抵抗力)を獲得してしまう。

確実に結核を治すためには、複数の薬でいっきに叩く多剤併用療法が必要になる。具体的に言うと、最初の2カ月は4種類の抗菌薬を服薬し、その後の4カ月間は2種類の抗菌薬を服薬する。

症状は早くになくなるが、菌を完全にやっつけてしまうためには、6カ月間きっちり服薬する必要があり、途中でやめると耐性菌(薬が効かない菌)が出てしまう。

この「6カ月」という治療期間の長さも制圧の壁となっている。

WHOは結核の標準的な治療法として、薬を患者には手渡さず、「毎日職員の目の前で飲んでもらう」DOTS(ドッツ:directly observed treatment short-course、直接服薬確認療法)と呼ばれる治療法を提示している。日本でも、入院から外来治療まで医師や保健師が連携し、定期的に服用を確認する日本版DOTSが推奨されている。

結核の診断には、痰を取って行う喀痰(かくたん)抗酸菌検査が重要で、近年はIGRA(インターフェロンγ遊離試験)という結核スクリーニング検査も行われている。

このほか、がん検診などで肺のレントゲン(X線)検査を撮ると、結核を発病しているかどうかがわかることもある。

検査は保健所か、保健所や結核予防会などが指定した病院で受けられる。身近に結核を発症した人が出た場合、濃厚接触者(家族、学校、職場などの関係者)は、自動的に保健所の検査を受ける流れになっているため、過度な不安は不要だろう。

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