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いい、ばば…「同音重ねる地名」調べてわかる面白さ 「おお」「かか」「きき」「ヌヌ」など多数、由来は?

東洋経済オンライン / 2024年1月7日 17時0分

だから「大」の現役地名は機械的に村を外した結果である。流山市の「木(き)」も奇異だが、木村ならまったく違和感がない。長野県東筑摩郡本郷村大も松本市に編入された際に松本市大村になったし、福井市や豊橋市などの大村町も同様である。

「おお」を超える「おおお」もあった

「おお」にはもっと上手があった。「おおお」という3重連で、高知県仁淀川町大尾である。「鯒魚(こちさかな)が南東に向き踊るような当地の形状から」という伝承があり、現在は愛媛県境に近い大渡(おおど)ダムの上流側の山村である。

そういえば東急目黒線と大井町線が接続する大岡山駅は聞き慣れているので違和感はないが、駅名標の「おおおかやま」を見るとどうにも不思議な感覚になる。京浜急行の上大岡駅もそうだ。実態としては「おおかやま」「かみおおか」と発音しているのだが。

「かか」は松江市島根町加賀だけで、かの百万石の「かが」と同じ字だが濁らない。日本海側に面した小さな漁港である。「きき」は徳島県美波町木岐で、徳島駅から南下するJR牟岐(むぎ)線の木岐駅もある。「ささ」は千葉県君津市笹、「しし」は島根県飯南町獅子(旧頓原町)、「せせ」は鹿児島県南九州市知覧町瀬世、「たた」は島根県川本町多田、「つつ」は長崎県対馬市厳原町(いづはらまち)豆酘。

「てて」は鹿児島県徳之島町手々で、こちらは手がふたつだから珍しい。『角川』によれば「地名は天城岳連山に続く高頂など4岳の岳岳(てて)にちなむ」とある。

わかりにくいが、山の頂(岳)を奄美方言で「て」と呼び、それに手の字を当てたらしい。近いところでは沖永良部島(おきのえらぶじま)の手々知名(てでちな)も「岳(てえ)にある火田[焼畑]」というから、共通の地名だろう。

濁点が付いているものでは滋賀県大津市の膳所(ぜぜ)。昭和8年(1933)まで大津市とは別の膳所町という自治体であったが、江戸期の城下町で、県都でもないのに滋賀県第二尋常中学校が置かれた(第一は彦根)。現在の県立膳所高校である。

北海道にある「ヌヌ」の由来

珍しいのはカタカナ2字の「ヌヌ」という地名。摩周湖を擁する北海道弟子屈(てしかが)町にあるが、これは北見・釧路地方のアイヌ語で温泉(ヌー)に由来するという。

もうひとつアイヌ語では美々(びび)が千歳市にある。アイヌ語のペッペッ(川また川)あるいはペペ(水また水)に由来するというが、新千歳空港のすぐ東側で、かつてはJR千歳線に美々駅もあったが、乗客が1日わずか1人で平成29年(2017)に廃止、信号場となった。

同じ音がふたつの地名で最も多いのが「ばば」(馬場)である。これは説明の必要もないだろう。「のの」は兵庫県相生市若狭野町野々(村時代は野々村だったので珍しくない)、「まま」は高知市万々と千葉県市川市真間で、ママといえば崖を意味する古語だ。

「みみ」は倉吉市耳である。ここへは珍しい地名を雑誌に連載していた20年ほど前に行ったが、耳の病に効験ある「弥勒(みろく)様」が「みみろくさん」に転訛し、やがて耳の地名になったという。

私がその弥勒堂を訪れたのはお彼岸の中日で、堂内は酒盛りの最中。私も弥勒様に供えられた赤飯のお相伴にあずかった。あの時に地名の由来を聞いた爺さんは元気だろうか。

今尾 恵介:地図研究家

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