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最新科学に学ぶ「脳の鍛え方」意外と知らないコツ 実は経験的に「当たり前」に行ってきたことだった

東洋経済オンライン / 2024年1月7日 15時0分

狩猟採集民族としての私たちの先祖は、獲物の群れを見つけた、食料となりうる果実やキノコ類の群生を見つけた、もしくは天敵と出くわしたなど、狩猟採集の運動中に重要な情報を発見すると、その位置や変化を脳の「座標系」モデルとともに記憶したのだと思います。

その座標系モデルの〝脳のGPS〞ともいうべき、空間の認知学習とその記憶を司るのは、海馬という部位です。

私たちの身体ハードウェアの仕組みは狩猟採集民族の頃と変わっていませんが、細胞単位では生成と解体が進んでいます。

脳の大きさは25歳頃がピークで、脳細胞は毎日10万個ずつ失われています。また、脳には1000億個の細胞がありますが、脳は毎年0.5~1%程度縮んでいます。

1日中、ユーカリの木でユーカリ葉を食べるだけの生活を送っているうちにコアラの脳が頭骨よりも小さくなった例もあります。一方で、運動をすれば脳細胞を新生させられることが明らかになっています。

アメリカの研究チームによると、心拍数が上がる持久力系の運動を1年行ったグループは、海馬のニューロンが新生し、サイズが2%大きくなっていたのです。

BDNFが増えることで新しい細胞が生成される

海馬の成長に重要な役割を果たすのがBDNF(脳由来神経栄養因子)というタンパク質です。このBDNFは脳細胞を保護し、生存と成長を促し、脳細胞間の連係を強化し、学習力と記憶力を高めているとされ、有酸素運動によって生成され分泌が促されます。

BDNFによって、脳で新しい細胞が生成され、多幸感が訪れ、性格も少し変わるとされています。また、BDNFが増える結果、短期記憶が長期記憶に転送されやすいこともわかっています。

哲学的な思考や、抽象概念を長期記憶に多く格納し、それらをたどりながら考えるためにも、散歩や軽く運動することで海馬を鍛え、そして考えることが重要なことがわかります。

また新生した脳神経細胞は50%しか生き延びられないのが、「新しい環境」にいると80%生存することが、マウスの研究等から確認されています。最新の生命科学では、生物は常に最適化に向けた最短距離を求めるアルゴリズムよりも、一見無目的に経路を様々に探索するアルゴリズムのほうが、環境変化への対応に適していると言われています。

これは、短期的な効率化だけの追求が必ずしも長期的な生存目的には適さないということも意味しています。

私たちの身体は遺伝的にも、無目的に新しい環境条件を試すことで、自らを進化成長させる傾向があります。新しい環境へと移動し、出来事に出会い、必要な情報を記憶し、そこで身体を動かすという生活に適応するように人類は進化してきました。

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