子育て支援金「国民負担増加なし」のカラクリ 医療費の自己負担増加は負担増ではないのか
東洋経済オンライン / 2024年1月7日 10時0分
子育て支援金は、実質的には医療費の自己負担の増加によって賄われることになる。これでも「国民負担の増加なし」と言い切れるか? 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第111回。
子育て支援金の何が問題か?
政府施策の負担に対する原則が混乱してきた。そして、ごまかしの議論が横行し始めている。複雑なごまかしなので、どこかおかしいと思いながら、それがなぜおかしいのかがよくわからない。そのために、おかしな説明に基づくおかしな政策が、堂々とまかり通っている。日本の経済政策は末期的な状況に陥っている。
その代表例が、2024年度予算の焦点の1つである少子化対策予算だ。
これに対する基本的な方針は、2023年12月22日のこども未来戦略会議 で示された。すなわち、児童手当の延長や所得制限撤廃、大学無償化などで、3.6兆円の施策を行う。このための財源は、歳出改革で1.1兆円、支援金で1兆円、既定予算の活用で1.5兆円とされた。
問題は支援金だ。医療保険の給付に充てられることを目的として徴収された保険料を、少子化対策という別の用途に流用してしまうのは、まったく正当化できない。
この問題で本来議論されるべきは、まず、今回の少子化対策によって本当に出生率が上がるのかどうかだ。さらにいえば、いまの時点で出生率を上げることが、高齢化対策として適切なのか否かだ。仮にこれらの論点がクリアされるとしても、そのための財源は増税であるべきだ。
ところが、実際には、施策の効果に関する検討は素通りして、支援策が決まった。そして、増税が最初から否定され、負担増をいかに見えにくくするか(ありていに言えば、「ごまかすか」)が考えられている。本末転倒もはなはだしい。
負担ゼロは「見せかけ」か?
政府は当初、医療費を削減する予定だった。予算折衝の過程で、財務省は、診療報酬本体(医師や看護師の人件費)のマイナス改定が適当との財政制度等審議会の答申に基づき、診療報酬の本体を1.1%削減する案を提案した。そうすれば、医療保険全体としての支出を増やすことなく、支援金を作り出すことができると考えたのだろう。
ところが、実際には、医師会の強い反対にあって、診療報酬の本体は、0.88%増になってしまった。薬価を引き下げたが、診療報酬全体では0.12%減にしかならなかった(注1)。これに加えて支援金を増設すれば、医療費全体は増えてしまうだろう。
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