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JR各社の「保守革命」、作業ロボット開発の現在地 人型ロボは実用化目前、リニア新幹線向けも

東洋経済オンライン / 2024年1月8日 6時30分

トンネル内の検査はコンクリート表面の目視検査に加え、検査員がハンマーで壁面を叩いて、打音により内部の状態を把握するという検査も行っている。高所での作業は危険を伴うほか、天井を叩くため腕を上げている必要があり、長時間の作業は身体的にもつらい。

そこで、JR東海はこの作業をロボットに代替させることを考えた。2015年から開発を始めて足かけ8年。6.5億円の費用を投じ、ようやく実用化が見えてきた。

ロボットを載せた大型トラックをトンネル内に据え付けると、ロボットアームが動き出し、レーザー測量機を使ってトンネル内壁と装置の位置関係や壁面の状態を自動計測する。続いて、アームが接触式の検査装置を壁面に押し付け、打撃を加え、振動を直接取得してコンクリートの内部の状態を評価する。

「機械がこのような作業を連続して行うのは日本初だろう」とJR東海総合技術本部技術開発部土木構造物技術チームの吉田幸司チームマネージャーが話す。打音検査だけではない。目視検査についても「撮影した画像からひび割れの判断は技術的にできると考えられるので、今後検討していく」とする。

具体的な運用は今後決めるが、省力化の効果としては、従来5人1組で行っている作業が、3人1組ですむようになるという。作業時間の短縮については「現場では人がやる場合に10~15分かかっていた作業が10分程度ですむ」という程度。しかし、現在のやり方では現場作業後に人がデータを持ち帰って整理する作業があったが、機械化により自動で計測できるため、「トータルでの作業時間にはより効果がある」(吉田氏)。

メリットは省力化だけではない。目視や打音での検査は検査員の経験に基づく技量も求められ、一人前になるまでには3~5年の実務経験が必要という。しかし、このロボットを使えば、熟練した検査員でも検出が不可能な微細な欠陥の検出が可能であり、検査の精度が高まるという。「検査の安全性、効率性が高まるほか、検査員の経験に依存せず正確かつ均質な検査を行うことができる」と吉田氏が自信を示す。

リニア新幹線での導入目指す

今回のトンネル検査ロボットはリニア中央新幹線での導入を目指している。リニアは大半がトンネル区間となるだけに、このロボットが導入されればメンテナンスにかかわる人手をぐっと減らすことができる。

とはいえ、リニア開業を待っていると、このロボットが実際に稼働するのは2027年以降ということになる。そこで、「東海道新幹線や在来線への導入も検討していきたい」と吉田氏は話す。

新幹線や在来線では上部に張り巡らされた架線がロボットアームの支障になるという課題があるが、それを解決できればこのロボットの用途は大きく広がる。JR東海はその日に備えてさらなる開発を続けている。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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