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能登で活躍「トイレトレーラー」で見た深刻な現場 上水道が止まり状況は最悪、災害関連死を防げ

東洋経済オンライン / 2024年1月10日 7時0分

事務局に届いた派遣要請は、深刻な状況を訴えて助けを求めるものが目立った。ある病院は「ポータブルトイレに袋を仕込んで糞尿が数人分たまったら廃棄している」として、「なんとかトイレトレーラーの派遣をお願いしたい」と連絡してきた。

矢野さんは「トイレに行きたくなるから食べたり飲んだりをがまんする、ということもすでに始まっているようです」と心配する。トイレをがまんすることにより体調を崩し、病気になり、ひいては災害関連死にもつながる、ということはよく知られる。

災害関連死が増える懸念

災害派遣トイレネットワークプロジェクトの発起人で、助けあいジャパンの共同代表理事、石川淳哉さんは、5日に静岡県御殿場の事務局を出発、同日夜に現地入りした。「状況は伝わっているよりはるかに最悪」と、気をもんでいる。

石川さんによると、余震のたびに道路で通れない箇所ができ、交通渋滞が発生。上下水道の復旧にも時間がかかりそうだという。「能登半島には平野がないので、仮設住宅を作る場所を確保するのが難しいのではないか。ということは、避難生活が長期化するということ。スペース不足で過密状態の避難所も多く、感染症患者も出ている」と石川さんは懸念する。

「災害関連死を減らしたい」という思いから始まった災害派遣トイレネットワークプロジェクト。2016年4月の熊本地震の場合、273人の死者のうち223人が災害関連死で、地震そのものによる死者数50人の4.46倍に上った。石川さんは「このままでは死者数だけでなく、災害関連死の数も熊本地震のケースを超え、死者数の十何倍にまでなってしまうかもしれない」と危機感を募らせる。

8日、被災地は雪に覆われ、凍るような寒さに包まれた。「これまでの復旧復興とは違ったアイデアや知恵、創造力が必要になっている」。石川さんは声を絞り出した。

災害派遣トイレネットワーク参加の自治体が現在保有するトイレトレーラーは20台。目標は「全国に1741ある自治体の数」(石川さん)という。

富山県魚津市と福島県棚倉町(たなぐらまち)には、今年3月にトイレトレーラーが納車される。費用はそれぞれ約2600万円かかるが、その約3分の2は、国の緊急防災・減災事業債という仕組みを使って起債し、後に地方交付税として算入されるので、実質3分の1が市町の負担となる。

といっても、市町にとって約800万円の支出は痛い。そこで、両市町はクラウドファンディングの仕組みを使い、今月末まで寄付を呼び掛けている。お金を出してくれた団体や人の名前が車体後部に並ぶ。

とてもひとごととは思えない

2011年3月の東日本大震災の際、棚倉町は東京電力福島第一原発に近い海沿いの地域から避難してきた住民を受け入れた。避難所となった体育館ではトイレ不足が問題になった。今回のトイレトレーラーの導入は、すでにトイレトレーラーを導入している自治体の長から話を聞いた湯座一平町長の強い思いで決めたという。

棚倉町住民課の緑川好浩さんは、「元日の緊急地震速報、大津波警報を聞いた時にはぞっとしました。13年前の東日本大震災級の災害が石川県に降りかかった。とてもひとごととは思えない。大変な状況とは思いますが、助け合いをお互いできれば」「支援の輪を広げていきたい。1台でも多く、ほかの自治体でも導入していただければと思います」と話している。

河野 博子:ジャーナリスト

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