ホンダと開発「アフィーラ」に透けるソニーの意図 アメリカで開催「CES」で最新プロトタイプ披露
東洋経済オンライン / 2024年1月10日 8時0分
ソニーはこれまでもモビリティ領域における半導体の重要性をCESで訴えてきた。だが、車載センサー事業単独の公開ブースでの展示など大々的に訴求するのは今回が初めてとなる。
展示の設計を担当したソニーセミコン車載事業部の八木直志氏は、展示の狙いについて「一般の来場層など、ソニーが車載向けの分野を手がけていることをよく知らない層に実力をわかってもらいたい」と語る。
アフィーラが採用実績不足を補う一手に
ソニーの半導体事業にとっての大きな課題の1つが、アプリケーションの不足だ。高性能な半導体を開発しても、性能を最大限引き出すためのソフトウェア開発や検証が追いつかないと、実際の需要につながらない。需要期が遅れるほど開発コストの回収も遅れていくことになる。
事実、2023年4~9月期の中間決算では、車載向けの半導体事業の立ち上がりが遅れている理由について、「⼤⼿顧客のADASシステム⾼性能化の進展が当社想定より遅れている」(決算説明資料)と言及した。
スマートフォンでは、ある電子部品が採用されてから製品として発売されるまでの期間が1年程度と短い。それと異なり、とくに自動車の場合は、採用されてから製品として消費者に届くまで、最短でも3年程度の時間がかかる。安全性や耐久性の担保がより重要視されているからだ。
自動車向けの半導体でソニーは後発。採用実績の積み上げは非常に重要だ。主力の高画素センサーは採用が進んでいるものの、業界トップのアメリカ企業、オンセミの背中はまだ遠い。
その点、ソニー自らが深く関与して開発・設計しているアフィーラでは、社内に蓄積されたセンサー活用のためのノウハウを惜しみなく投入することができる。自動車メーカー各社での採用に向けて、最新のセンサーが市販レベルで実用化されていることをアピールできる格好の場というわけだ。
世界の各種メーカーが相次いで参戦
今年のCESでは、宇宙やゲームなどを含む8つの主要テーマが掲げられているが、なかでも生成AIと自動車テクノロジーが注目を集めている。
例えば、アメリカの半導体大手、エヌビディアも生成AIについての発表と同時に、自動運転に関する技術でも「大きな貢献をしていく」と宣言した。すでに複数の新興EVメーカーがエヌビディアのプラットフォームを採用したと発表しており、注目の度合いはますます高まっている。
ほかにも韓国の電機大手LGが次世代自動車向けの新たな統合プラットフォームを発表。自動車部品などで知られるドイツのボッシュは、電動車向けに自動で充電を行うシステムの開発を公表するなど、関連の発表が相次いでいる。
来場者の心をつかみ、車載分野での知名度を向上できるか。今年のCESでの展示は、日の丸を背負うソニーの半導体事業の行方を占う1つの試金石となりそうだ。
梅垣 勇人:東洋経済 記者
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