日本人が知らない台湾の選挙の底層にあるもの 台湾選挙のリアル(最終回)、「地方派閥」と「政治家族」
東洋経済オンライン / 2024年1月12日 8時0分
台湾では2024年1月13日、総統選挙と日本の国会に当たる立法院の立法委員選挙が行われる。台湾を長らく支配してきた中国国民党(国民党)、現在与党の民主進歩党(民進党)の2大政党が台湾の政治を行ってきた中、台湾民衆党(民衆党)という第3勢力が急速に台頭している。
台湾の選挙戦には、日本など外国からよく見えない、かつ選挙選を左右する要素がある。「棄保」と呼ばれる有権者の行動と地方の「派閥」といったものだ。これが今回も選挙戦における重要なファクターとなっている。
〈台湾総統選挙「だから私はこの人に投票する」〉〈台湾総選挙・「支持者獲得」では空中作戦も発生〉に続く、「台湾選挙のリアル」の最終回。(一部、敬称略)
3つの政党が鼎立し、各陣営が当選に向けて血眼になっている中、これまで表面化しづらかった、隠れた問題が浮上しつつある。台湾で「棄保」と言われる問題だ。これは、棄権した、あるいは誰に投票するか決めかねている有権者が、選挙戦の最後の最後まで大きな変数となりうるためだ。
「棄保」とは、今回の総統選挙のように候補者が3人いる中で、この中で当選しそうな確率が高い候補を当選させるため、同様な公約を掲げているほかの候補への投票をやめるということ。あるいは、1人の特定候補を落選させるため、残りの2人の候補のうち1人に投票しようという動きをいう。いわゆる。戦略的投票だ。
有権者の「棄保」行動
例えば今回の総統候補のうち、現在は民進党の賴清徳候補が優勢だ。そのため、民衆党支持者が同党の柯文哲候補に投票するのではなく、国民党の候友宜候補にあえて投票を促して国民党候補の当選を促す、といった行動が「棄保」に当たる。
3人が混戦状態に陥っている現在、他陣営から3%程度の得票率を吸収すれば勝てる相手に投票する行動であり、実は民衆党、民進党、国民党はすべて棄保効果を作りたいと考えている。
とはいえ、すでに柯文哲と候友宜の単一化に失敗した。そのため、3党の元々の支持者が陣営ごとにすべて結集している現状では、棄保効果を生み出すのは難しい。
柯文哲と候友宜に共通するのは「政権交代」だが、実際には理念の差がとても大きい。頼清徳と柯文哲の2人は、相対的に革新的イメージがあるが、頼清徳の支持者は安定、柯文哲は刷新を望んでいる。それぞれの支持者は、この時点でほかの人に投票する可能性はとても低い。
選挙研究の専門家で国立台湾大学政治学科の王業立教授は、こう説明する。
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