1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

魚が獲れないのを海水温のせいにする人の盲点 「サンマが豊漁に戻った」と思う人が知らない真実

東洋経済オンライン / 2024年1月13日 13時0分

網走港で釣られたサンマ(写真:筆者提供)

サケ・サンマ・サバ・スルメイカをはじめ、マイワシなどの一部の魚種を除き、ほぼ全魚種の水揚量が減り続ける日本。その原因としてよく挙がるのが海水温の上昇です。農作物で言えば米の収穫量が天候に左右されるように、海水温の変化は水産物の資源量に影響を与えます。

【ランキングを見る】世界の水産物の漁獲量・生産量ランキングで日本の順位は?

言うまでもなく米の場合は、稲穂が実る前に稲刈りをする人はいません。しかしながら、漁業の場合はさまざまな魚種で、成熟する前の未成魚までを漁獲しています。これを「成長乱獲」といいますが、このため魚の資源量が減り、漁獲量も減るという現象が必然的に起きてしまいます。

日本は水産物の漁獲量・生産量でフィリピンの下

いくら大漁祈願しても効果はありません。厳格な資源管理により、成長乱獲をやめているノルウェーをはじめとする北欧・北米・オセアニアなどの国々と、日本とでは資源量で大きな差が出ています。

海水温の上昇で魚が減るのであれば、冷たい海を主漁場とする北欧や北米などの漁獲量が増える一方で、東南アジアのような暖かい海の魚の漁獲量が減りそうなものです。データで客観的に見てみましょう。

上の表は、世界の水産物の生産量をまとめたものです。1970年代から1980年代の前半にかけて、長期にわたり世界最大の生産量を誇った日本。ところが2021年には、ついにトップ10からもずり落ちてしまいました。

トップ10の国を見てみますとロシア・アメリカ・ノルウェーといった国々は冷たい海を主漁場としています。しかし残りのインドネシア・インド・ベトナム・ペルー・バングラデシュ・フィリピンといった国々はいうまでもなく、海水温が低い海域を主漁場にしていません。

つまり「海水温の影響」で魚が獲れなくなっているのであれば、なぜ東南アジアの国々の漁獲量は減っていないのでしょうか? さらに養殖を外して天然物だけに絞って漁獲量の推移を見てみましょう。

漁獲量が右肩下がりの日本

上のグラフは、漁獲量のトップ10の国々のうち、冷たい海を主漁場とするロシア・アメリカ・ノルウェーを除いた国々の漁獲量推移を示しています。

青の折れ線グラフが日本の漁獲量推移です。わが国だけが、右肩下がりに減り続けていることがわかります。一方でインドネシア、ペルー、インド、ベトナムといった国々は減少どころか増加傾向にあり、日本の漁獲量をどんどん追い越しています。なおオレンジ色のペルーの漁獲量の凸凹が激しいのは、主力魚種であるアンチョビの漁獲量の変動が大きいのが主な理由です。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください