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宇都宮ライトレール、その人気で露呈した"欠陥" 何の対応もせず放置すると評価は下がり続ける

東洋経済オンライン / 2024年1月16日 6時30分

西欧の状況を見て、路面電車を見捨てたアメリカ、イギリス、フランスも1970年代末から改善された路面電車の導入を行った。アメリカはこれをLRTと呼び、旧来の路面電車との違いを強調した。

自動車への過度の依存による都市の諸問題の解消に、LRTは人と環境に優しく、まちづくりの道具となる機能と利便性を備えた交通システムとして脚光を浴びた。さらに、1980年代には低床車が加わり、LRTの位置付けは盤石となり、世界中で導入されている。

台湾でLRTの導入が進む

アジアでLRTを導入していたのは長らく香港(新界地区。1988年)だけだったが、台湾の高雄市(2015年にプレ開業。以下同じ)、新北市淡水区(2018年)、同市新店区(2023年)に開業した。欧州のLRTと同様に乗客のすべてが最寄りの扉で乗降できる本物のLRTだ。片道乗車券(わが国で言う現金)利用者は停留所の券売機で乗車券を購入してから乗車する。

開業から3カ月経った宇都宮ライトレールのその後を見聞した。3カ月目の利用者数について、平日は約1万3000人で当初予想の108%、1カ月目の104%、土休日は1万1000~1万2000人で当初予想の261%、1カ月目の74%、また、ICカード利用率は平日約94%、土休日85%と公表されている。

開業当初の大幅なダイヤ乱れは、10月23日のダイヤ改正(多客時間帯の折り返し時間を増加など)によって今は落ち着いている。

しかし、現金利用者が多い平日の昼間と土休日は遅延が見られる。運賃収受そのものに時間がかかるほか、全扉で降車するIC乗車券利用者と最前部扉でしか降車できない現金利用者の車内動線の交錯が問題となっている。現金利用者は台湾のLRTのように全扉で乗降できるようにする必要がある。

まれにしか乗らない高齢者や小学生、他所からの来訪者など、現金で乗車する人は必ず一定数いる。これらの人に旧来の運賃収受方式を適用し、運賃支払いのために車内移動を強い、横断歩道から最も遠い最前部扉での降車を強いるのは、「人に優しい」LRTには似合わない。

最寄りの扉で乗降できるという1日乗車券を発売した。IC乗車券に違いないと期待したが、何と葉書半分ほどの大きさの紙券でひもが付いている。「周りから見えるように首からかけて乗降いただきます」と言う。遊園地の乗り物切符ならばともかく、公共交通の切符を首からぶら下げろとはいかがなものか。

富山ライトレールでも利便性の問題が残った

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