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能登半島「世界農業遺産」ブランド復興の行方 伝統と独特の景観が地震で大きな被害

東洋経済オンライン / 2024年1月16日 11時0分

2021年には国内すべての農業遺産認定地域が加入した「農業遺産認定地域連携会議」が発足。昨年11月には「能登の里山里海」世界農業遺産活用実行委員会の主催で、和倉温泉で「農業遺産シンポジウム」が開催され、能登地域2校を含む認定8地域11校から26人の高校生が参加し、意見交換会を踏まえて農業遺産の保全・活用に向けた「農業遺産ユースアピール in 能登」を発表した。次代を担う若い世代からのアピールということで、意義深いものがあった。

美しい棚田に亀裂

こうした能登独自の取り組みを展開していこうという矢先に大地震に見舞われてしまったのである。その被害は極めて深刻だ。

「能登の里山」の象徴で国の名勝にも選ばれている輪島市の白米千枚田(しろよねせんまいだ)。約4ヘクタールの範囲に約1000枚の小さな棚田が展開する。

地震直後、付近を通る国道249号は道路のひび割れや土砂崩れなどにより至る所で寸断された。展望台から千枚田を見渡せる人気スポットの道の駅には、観光で訪れた県外からの客などが孤立し車中泊を強いられていた。美しい棚田には無残な亀裂が多数入っている光景が報じられている。

農業関連の被害も広範に及んでいる。14日午後2時現在、農地の亀裂、土砂埋没など41件、農道の亀裂、崩壊、陥没など73件、水路の破損、崩壊など39件などとなっているが、ここには甚大な被害を受けた奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)の記載がない。石川県に確認すると「まだ被害確認ができていないため」だという。実際には相当数の被害箇所があると見ていいだろう。

大きな河川がない能登地方にはため池が多いが、その被害も大きい。ため池の亀裂、崩壊などは104件で、奥能登では能登町が24件、珠洲市25件、輪島市3件、穴水町1件となっている。

畜産関連では停電や断水などの影響で家畜に与える水やエサの供給が一時深刻な状況に陥った。その後、停電の解消で地下水をポンプでくみ上げられるようになった牧場もあるが、エサに関しては道路の寸断、渋滞などの影響で絶対量が不足しているという。畜産関連の施設損壊は43件に及んだ。

漁港も大きな被害

漁業関連の打撃も計り知れない。漁港は県管理7漁港、市町管理51漁港で、防波堤、岸壁、臨港道路損傷などの被害が確認されている。輪島市12漁港、珠洲市7漁港、能登町10漁港、穴水町1漁港と奥能登の被害が大きい。輪島市から珠洲市の外浦海域の漁港では地盤隆起で海底が露出。漁業関係者からは「漁港として使えなくなった」との悲痛な声が上がっている。

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