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能登地震で今なお電源切れ「地上波テレビ」の限界 過疎地向け小規模中継局はなぜ復旧に遅れ?

東洋経済オンライン / 2024年1月16日 8時0分

総務省地上放送課の担当者は「輪島地域のようにカバー範囲が広い大規模局には発電機が設置され、タンクに一定の燃料も貯められる。一方、町野地域のように小さなバッテリーで対応する局は、ヘリで行けたとしても継続支援を行うのが難しく、商用電源の復旧を待つしかない状況だ」と説明する。

端的に言えば、復旧が遅れている中継局は、規模が小さい分、非常用電源の設備も相対的に脆弱だったということだ。

東日本大震災後に対策強化

これまで放送局側は、2011年の東日本大震災の教訓を踏まえ、災害発生時を想定した中継局の停電対策には力を入れていた。

東日本大震災では最大120局が停波し、完全復旧に至るまで3カ月弱を必要とした。停波の原因は、中継局の損壊よりも、停電などで電力供給が絶たれたことが大多数を占めた。

総務省は、放送局に対して、停電しても放送に著しい支障を及ぼさないように、中継局には予備電源として自家用発電機やバッテリーを設置したうえで燃料備蓄や補給手段の確保に努めるよう求めた。放送局側も対策を強化してきた。

その後の熊本地震(2016年)では、テレビ放送の一部停波があったものの、1日以内に復旧。ブラックアウトに陥った北海道胆振東部地震(2018年)でも、7割超の中継局が停波を回避した。放送の防災対策に詳しい東北文化学園大学の鈴木陽一教授は「東日本大震災以降の十数年で(中継局の)強靭化が進み、非常用電源もしっかり備えていた。この間の努力は功を奏している」と評価する。

それでも、能登半島地震では、一部中継局で停波が長引いてしまっている現実がある。現地へのアクセスの悪さと予備電源がバッテリーであったことが原因だ。

防災の観点からいえば、中継局をアクセスしやすい平地に置いたり、バッテリーより長持ちする自家用発電機やタンクを設置したりしていれば、停波を回避しやすい。

しかしその分、コストは増える。平地に中継局を置くと、電波の到達範囲が狭くなることから設置局数を増やす必要があるほか、非常用電源を充実させると設備や保守費用の増加も見込まれるためだ。

近年、人口減や少子高齢化を背景に、広告費の減少など地方局を取り巻く経営環境は悪化しており、放送設備の維持にかかる費用の負担には限界があるとみられる。過疎地向けの小規模中継局ならば、なおさらだろう。

鈴木教授は「全中継局がどんなことがあっても停止してはならないとするのは、現状では非現実的だ」と話す。防災と費用の折り合いをどうつけるか、難しい問題を抱えている。

中継局の共用が進む可能性も?

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