「半導体ウェハー2強」信越とSUMCOで株価に明暗 2023年上昇率は信越が70%超、SUMCOは19%
東洋経済オンライン / 2024年1月17日 7時0分
一方の信越は、公にしていないものの2015年時点ですでに増産に踏み切っていたとみられる。結果、市況の影響を最小限に抑えウェハー事業での増益を確保し続けた。
信越のこうした投資判断について関係者が口をそろえるのは、「故金川千尋会長のノウハウがしっかり継承されている」ということだ。
1990年に社長に就任した同氏は、20年以上にわたって経営に携わったカリスマ経営者。とくに塩ビ事業では、他社が増強投資に二の足を踏む不況期においても正確に将来需要を見通したうえで「逆張り投資」を続け、後発ながら世界トップのメーカーに育て上げた中興の祖といえる存在だ。
2022年後半以降の半導体業界は不況期だったのは前述したとおり。そういうタイミングでは信越のほうが株式市場からの信頼を集めるのも頷ける。
株主還元の期待も影響か
株式市場の視点でいうと、株主還元強化への期待でも両社には差がありそうだ。
信越は、現在の斉藤恭彦社長になった2015年度以降、それまで20円で一定だった配当を8期連続で増配。さらに、総資産の3割超に上る1.4兆円の現金を保有しているキャッシュリッチ企業でもある。2018年度からは1000億円単位での自己株買いも行っている。
SUMCOのキャッシュ比率もこれまでの半導体特需の影響で足元では一時的に3割程度に高まっている。とはいえ保有現金は、会社規模の違いもあって信越を大きく下回る2500億円という水準だ。
半導体市況の好不況にかかわらず安定的に稼ぐ信越、業績のブレが大きく会社の規模で劣るSUMCO、という図式を踏まえれば、還元余力という点でも信越への評価が高まっているのではないか。
ウェハー市況が回復に向かうと想定される2024年。両社に対する株式市場の評価に変化がみられるかも注目だ。
石阪 友貴:東洋経済 記者
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