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能登半島地震の甚大な被害はなぜ起きたのか 対岸の火事ではなく考えたい「立地のリスク」

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 7時40分

■能登地方の住宅事情

昨年調査を実施した珠洲市正院町付近の観察では、黒色の「能登瓦」の古い木造住宅も多く、珠洲市の住民の方によると、築60年以上という住宅も多いという状況でした。

1981年5月以前に建築確認申請を取得した住宅は「旧耐震基準」の住宅ですが、旧耐震基準またはそれ以前の古民家も多いとみられる地域で、新しい耐震基準の家が立ち並ぶ新規分譲された街などと比べて耐震性の低い住宅が多い傾向があります。

■これまでの地震の繰り返しによるダメージ

概ね震度5弱程度以上の中規模の地震が起こると、特に耐震性の低い住宅においては、接合部の劣化などが進みやすいものと考えられます。

新耐震基準以降の住宅でも、基本的には「震度6強から7に達する程度の大規模地震でも人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害は免れる」ことを求めているもので、そのような地震が繰り返し起こることは想定されていません。

能登地方では、先述の通り複数の地震、また群発地震(前震・本震・余震の区別がはっきりせず、ある地域に集中的に多数発生するような地震群)に見舞われており、これらの地震活動により家屋が既にダメージを受けていたことも、今回の地震被害につながった可能性が考えられるでしょう。

■地盤の影響

地震波は通常、震源から地表に伝わるまでに地下構造の影響を受け、増幅されます。防災科学技術研究所が公開している「J-SHIS Map」では、地震波が深さ30メートルの地盤で何倍に拡大するかを示す「表層地盤増幅率」を確認できます。

例えば、海や川が運んだ低地の地盤からなる輪島市などを「J-SHIS Map」を見ると地盤増幅率が高く、地震時に揺れやすい地盤だとわかります。

そのため今回の地震でも、地域内で特に地盤が揺れやすい地点などがあった場合、地盤による地震動増幅による震度の増加や、地盤と家屋の共振による被害があった可能性も考えられます。

なお、昨年5月5日の能登半島を震源とする地震後の筆者らによる調査では、珠洲市の被害が大きかった地点では、被害の小さかった場所より揺れやすい地盤であったこと、また、既存住宅と共振しやすい周期特性を持った地盤の地域があったことが分かっています。

その他の家屋被害

■液状化による被害

新潟県新潟市の一部や、石川県内灘町の周辺など広い範囲で、地盤の液状化による著しい被害が生じています。

日本海側の平野には、潟湖(せきこ:湾口が砂の堆積などで閉塞され海の一部が閉じ込められてできた湖)や砂丘列があり、地域によっては液状化リスクが高い地域が含まれていることが影響すると考えられます。

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