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韓国がついに伝統の「犬食禁止」踏み切った事情 「伴侶動物」という考え方が伝統も変えている

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 12時20分

「犬食禁止特別法」は、出席議員210人(総議員数:298人)のうち、賛成208、棄権2の賛成多数で可決された。昨今の韓国国会の様子と異なる風景で反対なしでの可決には意味がある。

法案可決後、動物保護団体は会見を開き「伝統という名の下で容認され、動物福祉向上の妨げになってきた犬食を終わらせる法案の可決だ。熱列に歓迎する」と話した。メディアも可決を速報で伝え、関心の高さがうかがえる。

今回可決された「犬食禁止特別法」(「犬の食用目的の飼育・食肉処理および流通などの終息に関する特別法」)の中身はこうだ。

食用を目的として犬を飼育や繁殖させる行為、また、食品として流通・販売の禁止を柱とする。違反すれば、最長3年以下の懲役または最大3000万ウォン(約330万円)以下の罰金に処せられる。ただ、違反時の罰則には3年という猶予期間が設けられた。

食用目的で飼育されていた犬をどうするか

なぜ、3年の猶予期間を設けたのか。それは、現在食用を目的に飼育されている犬をどうするのかが問題となっているからだ。

法案の成立により、犬農場や流通業者、そして飲食店は詳細な営業内容と廃業計画書を国や自治体に届け出る義務が生じる。この届け出を元に、行政はこれらの業者の廃業や転業を支援する予定だが、韓国の農林水産食品部によると、約1100の犬農場で約53万匹の犬が食用として飼育されている。けっして少なくない数だ。

保護するとしても、保護施設が足りず、不可能に近い。犬肉関連業者の反発もある。犬肉禁止法案をめぐって犬食関連団体は、1匹あたり200万ウォン(約22万円)の支援金と廃業に対する賠償金を求めている。犬肉業者にとって犬肉禁止は死活問題となっている。

さらに、団体の関係者は「飼育されている犬を国が買い取るとしても、ペットとして飼育された犬ではないので、扱いは困難だ」と指摘、「安楽死という方法もあるが、その場合、動物虐待として世界的な批判にさらされる」と話している。

韓国政府は、業者の廃業や飼育されている犬の保護などを支援する計画だが、今現在具体的な支援策が見えないままだ。犬肉をめぐる混乱はしばらく続くことが予想される。罰則の3年間の猶予でグレーゾーンが発生し、犬肉が流通・販売される可能性は十分にあるのだ。

なぜ犬を食するようになったのか

犬肉を食べる風習は、朝鮮王朝時代の記録に度々登場する。朝鮮王朝時代に刊行された医学書「東医宝鑑(ドンウィボガム)」(1613年)には、犬肉が「五蔵を安定させ、血脈によい」という記述がある。体に栄養を補う食べ物として犬肉は、貴族から庶民まで広く楽しまれたという。現在は「補身湯(ポシンタン)」という名前で残っている。

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