シリコンバレー、他国がまねても失敗する根本理由 表面だけを見ていてはわからない深い背景
東洋経済オンライン / 2024年1月18日 11時1分
IT産業の集積地であるアメリカのシリコンバレー。なぜ他の国々が追随しようとしてもうまくいかないのか。その理由について、ワシントン大学の歴史学教授マーガレット・オメーラ氏が5年におよぶ取材の末に書き上げた著書『The CODE シリコンバレー全史』から一部抜粋・再構成してお届けします。
前編:50年前、無名の土地がシリコンバレーになった歴史
大胆なビジネスリーダーがシリコンバレーを生んだ
ロナルド・レーガンは正しかった。ハイテク革命は、アメリカでしか起こりえないものだった。そして彼をはじめ実に多くの人々は、ジョブズやゲイツ、ヒューレットとパッカードといった起業ヒーローをほめそやして正解だった。
シリコンバレーは、ビジョンを持った大胆なビジネスリーダーなしには決して生まれなかった。レーガンとその保守派仲間はまた、規制が強すぎて国有化が進みすぎた産業は起業的イノベーションの大きなハードルとなりかねないという点で正しかった――世界中の無数のシリコンバレーを目指す地域がそれを実証している。
だが自由市場と個人としての起業家、まったく新しい経済を讃える中で、シリコンバレーの神話は現代ハイテク産業における、もっとも興味深い、先例のない、本質的にアメリカ的なものを置き忘れてしまった。
というのも、こうした起業家たちは孤独なカウボーイなどではなく、非常に才能ある人々だが、その成功を可能にしたのは他の多くの人やネットワークや制度だったからだ。そうしたものとしては、両党の政治リーダーたちが口をきわめて批判し、多くのハイテクリーダーたちが眉ツバ視したり、ときには露骨に敵意を示したりした、大きな政府的な計画もある。
原子爆弾から月面着陸からインターネットのバックボーンとそれ以外まで、公共投資は科学と技術的な発見の爆発を促進し、その後何世代ものスタートアップの基盤を提供したのだ。
だがシリコンバレーの存在は政府のおかげだと宣言するのは、それが稼働する自由市場の最も純粋な表現なのだと宣言するのと同じくらい、まちがった二項対立でしかない。シリコンバレーは、大きな政府の物語でもないし、自由市場の物語でもない。その両方なのだ。
アメリカ政府がハイテクに投資したという事実と同じくらい重要なのは、そのお金がどのように流れたか――間接的に、競争的に、ハイテク世界の男女に未来がどのようなものになるかを定義づける、驚くほどの自由を与えるような形で流れたかということだ。
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