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「微分は実生活で使わない」と思う人に欠けた視点 現役東大生が解説する数学の重要性と面白さ

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 12時10分

このように、時間と進んだ距離の両方を同じ数で割っていくことで、より短い間隔での速度を計算することができるのです。これを極限まで小さくしたもの、つまり「瞬間の速さ」を求めることこそが微分なのです。

例えば、1時間で30km進んだ車を考えたときに、平均の速度は時速30kmですが、実際は常に同じスピードだったわけではありません。もし前半の30分で10km、後半の30分で20km進んでいた場合は、前半の時速は20km/h、後半の時速は40km/hとなります。

これをもっと分解して、最初の10分で3km、次の10分で2km、その次の10分で5km……と考えていけば、時速はそれぞれ18km/h、12km/h、30km/hと計算することができます。これを0.1秒、0.01秒といった次元で行って逐一計算した値が、デジタルの速度計に表示されているのです。

具体的には、自動車のタイヤの車軸に回転数を測るセンサーがついており、その回転数をコンピューターが速度に変換する計算を行っています。

非常に簡潔な計算で説明すると、1回転で1m進む自動車のタイヤが0.1秒間で2回転した場合、その0.1秒間での時速は、1秒間で20回転できるスピードであるため、

20m/s(秒速20m)=1200m/min(分速1200m)=72000m/h(時速72000m)=72km/h(時速72km)

より、72km/hと求めることができます。

この動作を0.1秒ずつ、いやもっと細かなスパンで瞬時に行い続け、それをリアルタイムで速度計に表示させ続けているのです。この「微分」を利用した計算方法で、冒頭の問題でもあるような加速時・減速時の瞬間瞬間の速度を導き出している、ということなのです。

天気予報にも微分の考えが使われている

微分が使われているのは、もちろん速度メーターだけではありません。皆さんが日常でよく目にするであろう「天気予報」にも、この微分の考えが使われています。簡単に説明すると、「天気が決まるためのさまざまなパラメーターの中から一部を抽出し、その変化を分析することで今後の動きを予測する」ということを行っています。

例えば、ある地点から500km離れたところに雨雲があり、その雨雲が1時間に100kmのスピードで移動しているとします。その場合、5時間後に雨が降るのではないか、と予測を立てることができます。

しかし、1時間に100kmのスピードで移動していた雨雲が、1時間後にはそのスピードが時速80kmに減速していたら、「この先も雨雲の移動スピードは遅くなり続け、停滞するのではないか」という予測を立てることができます。

もちろん実際の雨雲の動きはもっと複雑であるため、観測する時間の幅をもっともっと小さくして、その瞬間瞬間の大気の動きを捉えていくのです。そして、その動きの変化から、未来の動きを予測する。それがまさに、「微分」なのです。

皆さんが普段何気なく目にしていたものに、高校数学で習う微分・積分は広く用いられています。その仕組みを理解することで、より効率的に、より楽しく物事に触れられるようになるのではないでしょうか。

永田 耕作:現役東大生・ドラゴン桜チャンネル塾長

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