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生成AI時代に注目される「古代ギリシャの美徳」 リスクを避けAIを正しく使う「人類の英知」

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 9時0分

これらを組み合わせた計24の条件に被験者をランダムに振り分けて検証したところ、橋のジレンマではアドバイスは多数派の判断をひっくり返すことさえあり、ChatGPTによるアドバイスとして開示されている場合にも当てはまっていた。そしてアドバイスがChatGPTによるものとして開示されているかどうかに関係なく、両方のジレンマでアドバイスの効果はほぼ同じく、道徳的判断に影響を与えていたことが判明している。

また、アドバイスがなければ同じ判断を下すかどうかを被験者に尋ねたところ80%がそうすると回答していたが、実験の結果は、ChatGPTのアドバイスが道徳的判断に与える影響を被験者自身が過小評価していることを示唆する。

つまり、ChatGPTによるアドバイスだとわかっていたとしても、我々の倫理的判断はその内容に影響されるだけでなく、それを自分の判断として受け入れてしまう危険性を表しているのだ。生成AIの時代に突入しようとする今だからこそ、どこまでがAIの意見で、どこからが自分の意見かを見極める「思慮深さ」が求められているのである。

勇気(Fortitude)

2つ目の徳は勇気(Fortitude)である。

生成AIのあまりにも強力な生成能力は、人間の知的活動の一部を代替するようになるだろう。だが、過度に恐れる必要はない。人とAIの共創がいよいよ現実になったと考えれば、今までできなかったことができるようになるのだ。

全米経済研究所の研究レポートによると、カスタマーサポートのオペレーター向けに会話支援型の生成AIを導入して効果を検証したところ、非熟練者はAIによる提案に従って行動に取り入れることで、応対品質が向上する可能性が高く、AIの支援によって非熟練者が熟練者のようにコミュニケーションするようになるという示唆的な証拠を得ることができたとしている。

一方、熟練者の場合、自身の行動に内在する潜在的な暗黙知を生成AIが捉えているので、影響は少ないとしている。したがって、過度に恐れず「勇気」をもって活用に踏み出すべきである。

そして、何か倫理的な問題に気づいたら声を上げる「勇気」も必要だ。技術を正しく使い、よりよい社会を実現していくためには、多くの人の協力が不可欠である。企業や組織側もそういった声に真摯に耳を傾け、問題がある場合には誠意をもって対応する姿勢が求められているため、躊躇なく声を上げ、利用者自身も問題が解決されない場合には利用中止を決定できる「勇気」が必要だ。

節制(Temperance)/正義(Justice)

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