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紫式部が友達の人生相談に送る「心が晴れる言葉」 遠方に行くか悩む友達に、どうアドバイス?

東洋経済オンライン / 2024年1月20日 12時30分

しかし、それは式部との別れを意味します。京都にも近い畿内の国司ならまだしも、「筑紫へ行く人のむすめの」「西の海を思ひやりつつ月みればただに泣かるるころにもあるかな」との女友達が詠んだ歌もあるように、女友達は筑紫(筑前・筑後。今の福岡県)に行くことになったようです。

友達の父は筑前守か筑後守に任命されたか、太宰府の役人にでもなったのでしょう。その女友達は、これから目にするであろう西海を想像し、都の月を見ただけで涙があふれ出てくると心情を吐露しています。

九州に下るということは、今で言えば、外国に行くのと同じようなことで、不安や心細さが友達の心をかき乱していたはずです。

友達への思いやりが伝わる返歌

この女友達の歌に対し、紫式部は「西へゆく月のたよりに玉づさの書き絶えめやは雲の通い路」と返歌しています。

つまり「月は毎夜、西を指してまわっていくので、月にことづけてでも、お便りを差し上げます。お手紙を欠かさないわ」というような意味です。式部の友達に対する思いやりが色濃く出ている歌といえるでしょう。

この友達以外にも、紫式部には女友達がいたようで「はるかなる所に行きやせむ行かずやと思ひわづらふ人の、山里よりもみぢを折りておこせたる」との詞書もあります。

「遠いところに行こうかどうしようか、思い悩んでいる人が、山里から紅葉した木の枝に歌を付けて寄越してきた」のです。風流ですね。

女友達と思われる人(親戚の娘という見解も)が式部に寄越した歌は「露深くおく山里のもみぢばに通へる袖の色を見せばや」というもの。歌中の「露」というのは、涙を表しています。

女友達は、露深い山里で涙にくれていると。友達が贈ってきた紅葉の色は真紅。私(女友達)の衣の袖の色は、それと同じであると。血の涙(血涙)を流していることを表現しているのでしょう。女友達の悲痛な叫びが聞こえてきます。

その女友達がどうして遠方に行くことになったかはわかりません。先程と同じように、父親が遠国の国司にでもなったのか、それとも夫の地方官としての赴任先が遠方になったのか。

当時の女性の生活は、実家の親が面倒を見ることが多いので、おそらく、後者の夫となる人についていくかどうか、血の涙が出るほど悩んでいたのでしょう。女友達が当時「山里」にいたのは、どこかのお寺にでも参籠していたからと思われます。

友達の性格をよく理解して歌を詠む

では、式部はこの友達の人生相談に何と答えたのか。「嵐吹く遠山里のもみぢばは露もとまらむことのかたさよ」と例により歌で答えます。

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