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「ウクライナ敗戦」を世界大戦へ拡大させるな ロシア「ゲラシモフ・ドクトリン」による戦争の結末

東洋経済オンライン / 2024年1月20日 7時50分

ロシアは、ソビエト時代のアフガニスタン攻撃で痛い目に遭っている。それは、アメリカが北爆や中東での戦争で繰り返したように、絨毯爆撃を行い、多くの市民を殺戮し、アフガン人の反感を買い、それ以降の戦線で相次ぐゲリラ攻撃で守勢にたたされ、敗北したという苦い経験だ。

こうした経験からロシアは、市民への直接攻撃は避け、攻撃目標は当面のみならず、背後にある銃後のインフラ設備にターゲットを絞っているという。インフラとは、軍事施設、飛行場、迎撃システム、レーダーなどの情報施設、橋や道路や鉄道などの兵站設備である。

確かにイスラエルのガザ攻撃を見ても(もちろんガザからのイスラエルの攻撃を見ても)、市民への攻撃は国際法違反というだけでなく、人々の憎悪をかきたて、復讐の連鎖を生み出す。破壊されることによる見かけの打撃は大きいが、こうした攻撃は末代までの怨念を生み出す。

インフラ攻撃は、ボクシングのボディブローに似ている。間接的ではあるが、次第次第に相手を消耗させ相手の動きがとまる。考え方によっては、残酷な攻撃だ。真綿でじわじわと締め付ける方法だ。

最終的に根をあげたところで勝利する作戦ともいえる。こうしたロシアの攻撃は、ゲラシモフ将軍の理論から来ているという。

通称「ゲラシモフ・ドクトリン」と呼ばれる作戦は、まさにこの消耗戦である。西側の軍隊はこれまで比較的軍事的に弱い地域と戦争をしてきたこと、また西側から見て殺戮もやむなしという人種的偏見をもっていた地域が対象だったこともあり、直接攻撃を展開してもいた。

それが可能だったのは、相手の抵抗が少なかったからである。しかし、近代的軍をもっていて、軍備においてさほど差がない国同士では、周到な作戦と、相手の兵力を削ぐという作戦をしないと、大量の死者を出すことになる。

ゲラシモフという名は、2023年10月にウクライナのゼレンスキー大統領と停戦交渉に入ったのではないかという噂や、最近の攻撃で戦死したのではないかとウクライナ筋の情報で噂されるロシア軍のナンバー2である。

作戦要綱「ゲラシモフ・ドクトリン」

ゲラシモフは、「ゲラシモフ・ドクトリン」という作戦要綱を2013年に発表している。これは2006年に『ミリタリー・レビュー』に翻訳されていて、ネットで誰でも読める。そこでこう述べている。

〈戦争のルールそのものが変わった。政治や戦略的目標を完遂する非軍事的手段の役割が増大し、多くの場合、その効果において武器の力の威力を、凌駕しているのである。適用される紛争の方法の焦点が、政治、経済、情報、人事、そのほかの非軍事的手段―人々の抗議のポテンシャルと歩調を合わせて適用される―を広く使うという方向へシフトしたのである〉(24ページ)。

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