「ウクライナ敗戦」を世界大戦へ拡大させるな ロシア「ゲラシモフ・ドクトリン」による戦争の結末
東洋経済オンライン / 2024年1月20日 7時50分
まさにこれは、クラウゼヴィッツの『戦争論』の有名な定義、「戦争は政治の延長である」という言葉を体現したもので、とりわけ新しいものではない。しかも、こうした戦略がどこから生まれたかというと、1991年のアメリカの湾岸戦争からだというから、むしろ戦略のヒントはアメリカから来ているといえる。
情報技術の進展で、戦争の遂行は極めて間断のない決定を強いられる時代になっていて、そのためには前線での戦闘以上に、中央司令部での広範な戦略が重要になっているという。
だから前線の戦闘能力もさることながら、そこに至る中央の戦略の持つ意味が大きい。そして、戦争に勝利するには、非対称的に「敵の利点を徹底的に無力化」することだという。
まさにその無力化ということが、インフラ設備への徹底攻撃だということになる。そしてそれを遂行するために、AIを使った科学戦略があげられている。AI技術の導入という点で、ロボットによる戦争遂行や宇宙戦争という問題もゲラシモフはあげている。
しかし、それ以上に重要なことは経済と外交であろう。ゲラシモフは軍人らしく、この問題にはほとんど触れていない。
ただ、軍事力だけではないハイブリッド戦争の遂行は、まさにこの経済と政治、とりわけ外交にかかっているともいえる。経済と政治、この点におけるロシアのこの2年間の行動は、これまでの戦争のときとかなり異なっている。
ロシア外交の奮闘ぶり
NATO(北大西洋条約機構)諸国の経済封鎖による圧力を避けるために、ロシアの外交活動には目覚ましいものがあった。ロシアのラブロフ外相が世界中あちこちと飛び回り、NATOに敵対的な国家を自らの陣営に引きずり込んだ。
なおかつ国際貿易をドルやユーロによらない決済制度に変えることで経済的制裁を回避し、友好国とりわけBRICS体制を強化することで「孤立したロシア」というイメージを払拭していった。
NATO諸国が得意とするところは軍事力だけではなく、その経済力と政治力にあったのだが、ロシアはその1つ経済制裁と経済封鎖を、友好国を拡大することで切り抜けている。また「国際的価値基準」という名の西側の政治を、「多様な価値観」という発想で切り抜けようとしている。
戦争がアジア・アフリカの反NATO勢力の支持を得ることで展開されれば、ウクライナ戦争は欧米対反欧米という対立の戦争となる。当然、ウクライナの局地的戦争という枠を越えてしまう。ゲラシモフ・ドクトリンの気になるところがそこにある。
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