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株価高騰で「投資しなきゃ」焦る人を待つ落とし穴 「新NISA熱」で損しないために気をつけたいこと

東洋経済オンライン / 2024年1月20日 11時50分

『きみのお金は誰のため』102ページより

たしかに投資をすることは大事だが、焦って始める前に、新NISAによる投資マネーで日本経済がどれだけ復活するか、そして株価はまだ上がるのかを、落ち着いて考えてみようと思う。

株に流れる投資マネーは、2つの点で株価に影響すると言われている。

ひとつは、株を買うことによって株価が押し上げられること。もうひとつは、株によって調達した資金で企業が事業拡大を図り、さらに株価を上昇させることである。

ところが、この株による資金調達というのがくせものなのだ。

ダフ屋とヤジを飛ばす野球ファン

昭和の頃、野球の観戦チケットを購入する方法は2種類あった。正規の窓口で買うか、“ダフ屋”と呼ばれる転売業者から買うか。転売業者からチケットを購入しても、イベントの主催者にお金が流れるわけではない。

株式を購入する場合も、同じだ。企業が新規株式を発行する場合、その購入代金は企業に流れる。ところが、それ以外の場合は、すでに株を持っている人から購入するので、購入代金はその株を持っていた人に流れる。転売されているだけなのだ。

株の取引の場合、こうした転売の取引価格(株価)が上がることは悪いことではない。新規で株式を発行する場合に、高い価格で売ることができるから資金調達がしやすくなる。

ところが、現在の日本では上場株式の新規発行による資金調達は少ない。年間700兆円ほどの株取引のうち、新規発行される株式は1兆円程度。あなたの預金口座に眠っているお金を株式投資に回したところで、企業側に資金需要がなければ、企業には流れない。事業も拡大されないし、業績には何の影響も与えない。

そのお金は、株を売ってくれた人の預金口座で再び眠ることになる。

そのお金が企業に流れなくても、個人投資家が増えて「物言う株主」が増えれば、企業の経営に影響を与えるという意見もある。経営に詳しい人が助言をするならそのとおりだが、まったくの素人が口出すのは逆効果であろう。「ピッチャーを早く替えろよ」と監督にヤジを飛ばしているようなものだ。

個人の意見が重宝されるのは、投資家ではなく消費者としての個人。「観客席でビールを販売してほしい」というような“お客様の声”を届けたほうが、よほど意味がありそうだ。

長期的に薄れる投資マネーの影響

もうひとつ、「株を買うことによって株価が押し上げられる」と書いたのだが、長期的にみるとこちらの影響も実はあやしい。

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