勘違いから一転、新種新属の恐竜を発見するまで ウズベキスタンまで駆けつけて得られた成果
東洋経済オンライン / 2024年1月21日 19時0分
どういうわけかその後、カルカロドントサウルス類は忽然と地球上から姿が消えてしまう。北半球では完全に絶滅してしまう。その背景には、ティラノサウルス類の台頭があっただろうと私はみている。
上顎骨の長さから全長を推定
早速、収蔵庫の整然と並んだ白いキャビネットを開けて、カルカロドントサウルス類に近縁な肉食恐竜の頭骨レプリカ標本を取り出してもらった。ノギスやメジャーを使って、上顎骨の長さや頭骨全体の長さを測っていく。
ウズベキスタンの部分的な骨とは異なり、国立科学博物館の標本は完全な頭骨だったので、その大きさにとても驚いた。骨1個だけだとその恐竜の大きさを想像するのはとても難しい。でも、完全な頭骨であればその大きさは一目瞭然。
例えばヤンチュアノサウルスは上顎骨だけで47センチあり、頭骨全体では80センチ近くもあった。ちょっとしたちゃぶ台くらいある。なかなかの威圧感だ。
国立科学博物館で調査した恐竜は全身骨格が見つかっていたので、その論文に当たれば全長が記載されている。つまり、1種につき上顎骨の長さと全長データの両方を入手できる。
そこで私は考えた。いろいろな肉食恐竜で上顎骨の長さと全長を調べ、両者の間に比例関係(正確には相関関係)が見られれば、上顎骨の長さから全長を推定できるだろうと。
さらにデータを集めて統計分析をすると、予想通り、高い相関関係が得られた。上顎骨が大きい種ほど、全長も大きくなる。この関係は簡単な式(y = ax + bという回帰式、中学校でやったよね)で表すことができる。
この式にウズベキスタンの標本も当てはめると、全長は7.5~8メートルくらいとはじき出された。全長12メートルに達するティラノサウルスやギガノトサウルスにはかなわないが、そこそこ大きな肉食恐竜だ。
これは新種新属の恐竜である
9000万年前のウズベキスタンには、やはり小型のティラノサウルスの仲間であるティムレンギアを凌駕する肉食恐竜が存在していた。上顎骨をさらに調べると、他のどのカルカロドントサウルス類にも見られない固有の特徴がいくつかあった。
例えば、骨の表面にミミズ腫れのような縦じわが入っていたり、前眼窩窓とよばれる大きな穴の縁部分にこぶ状の隆起が見られたり、といった具合だ。ひとつだけの骨だが、4つも新しい特徴を見出すことができた。この発見により、新しい種類の恐竜であることは確定的となった。
私たちはこの恐竜を、新属新種のウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシスと名付け、発表した。
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